寺地はるなさん3冊目。お見舞い代行業を個人的に営む喫茶店の店主に雇われている主人公の雨音(26)。一風変わった職業という意味では真っ先に原田ひ香さんの『ランチ酒』シリーズが思い浮かんだ。そんな雨音と喫茶店主、その恋人のような関係のリルカ、元同僚の母と息子、お見舞い代行依頼者たちとの淡々とした日常が描かれている。雨音は感情や他人と仲良くしたいという感覚が乏しいため、起こった出来事に対して感情的にならずスルーしていく様子が一貫して描かれていた。特別なことは起こらないし、主人公の生活がガラリと変わるといった展開もなく物語は終わる。「普通」の感覚の人にとっては、雨音は幸せなのか、とか、楽しいのか、とか疑問が生じるかもしれない。作中でもウザめの男性が登場し、お節介を焼いていた。それに屈せず淡々と対応する雨音は、くよくよしない分エネルギーの消費もないだろうし、強いと思った。「普通」の価値観とは結局人それぞれで、実際はないようなものなんだろうなと改めて実感した。
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- 感想投稿日 : 2023年11月21日
- 読了日 : 2023年11月21日
- 本棚登録日 : 2023年11月21日
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