ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界 (ちくま文庫)

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  • 筑摩書房 (1988年12月1日発売)
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感想 : 11

「伝説というものはその発端をなす歴史的事件に近づけば近づくほど素朴単純な姿を現してくる」

1284年6月26日に130人の子供たちがハーメルンの町で行方不明になった歴史的事実と、これを<ハーメルンの笛吹き男>によるものだとする伝説に、ドイツ中世史の専門家である著者が迫っています。

著者はネズミ捕りである<笛吹き男>と誘拐事件を途中で結合された話として、第1部2章の時点でこれまでの研究による誘拐事件に対する解釈を挙げたうえで今日でも有力なものに絞り込みます。

1.舞踏病
2.ジーベンビュルゲンへの移住
3.子供の十字軍
9.偽皇帝フリードリッヒ2世の
11.崖の上から水中に落ち溺れ死んだ
12.地震による山崩れで死亡
17.1260年のゼデミューンデの戦で戦死
24.死の舞踏の叙述から派生したもの
※ 東ドイツ植民説

有力説のなかから著者なりの真実が導き出し、誘拐事件の謎解きとしては第1部の時点で完結します。
つづく第2部ではもうひとつの謎であるネズミ捕りの笛吹き男の実像と社会背景が詳述されるとともに、筆者は以下のような言葉を漏らします。

「知識人が民衆伝説をとらえようとする場合、知識人がおかれた社会的地位が影を投げる」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年7月23日
読了日 : 2020年7月23日
本棚登録日 : 2020年7月23日

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