写本や文学作品の制作・受容のされ方を通じて中世の人々の文化活動だけでなく政治的な思惑も見えてくる、とても興味深い一冊。文学には疎いが、残された写本から当時を探る試みには謎解きミステリのような高揚感を覚える。中世のヨーロッパにおいて信仰と不可分だった本が次第に世俗の人々のためのものになり、本作りに携わる人々が自意識に目覚め、自己主張を始めていくというくだりは文学も音楽も同じということだろうか。近代以前の音楽が演奏される文脈と分かちがたいものだったように、文学も作られた時代や環境と切り離して考えることはできないのだと改めて認識することができた。
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- 感想投稿日 : 2021年10月8日
- 読了日 : 2021年10月8日
- 本棚登録日 : 2021年10月2日
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