逆説の日本史6 中世神風編(小学館文庫): 鎌倉仏教と元寇の謎 (小学館文庫 R い- 1-6)
- 小学館 (2002年6月6日発売)
チクチク作業邁進の煽りを食らって(?)、ちょっと時間がかかってしまった「逆説の日本史」読書。 ようやく第6巻を読了しました。
冒頭で KiKi は「チクチク作業邁進の煽りを食らって(?)、ちょっと時間がかかってしまった『逆説の日本史』読書。」と書いたけれど、今回の読書に時間がかかってしまったのにはそれ以外にも理由があります。 それは冒頭3章の仏教の歴史を俯瞰した部分で、ここの内容が仮に著者が言うように「表層的」であったにしても実に読み応えのある部分だったからです。 著者が歴史学会のお歴々をメッタギリにして悦に入っている感もあるこのシリーズの中で、それらのちょっと過激な(に見えなくもない)権威筋に対する攻撃性がなりをひそめ、KiKi には極めて読みやすい文体(要するに著者の自己主張の薄い文体)で要約してあり、読み飛ばす余地がほとんどなかったんですよね~。
対して後半3章は「逆説の日本史スタイル」に戻ろうと抗っている感がそこかしこに見られ、文章自体もかなり粗雑な印象を受けます。 そうであるだけに、後半3章に入って「斜め読み体制」と言うか「読み飛ばし体制」に逆戻りし、そこからは一気に読了した・・・・・そんな雰囲気がなきにしもあらず・・・・です。
元寇の話題に関しては、我々は「元寇」と呼びあたかも元国の正規軍が攻めてきたかのような印象を持ちがちなあの戦役において、元が遣わした軍団が今日で言う「多国籍軍」であり(要するに史上最強軍団そのものではなかった)というあたりがちょっぴり「へぇ!!」で、それ以外の部分はさほど目新しい話、「逆説的なアプローチ」はないのかなぁ・・・・・と。
そして後醍醐天皇の登場と同時に久々に「言霊信仰」だの「ケガレ」だのという著者の論旨の骨子たる部分が復活(笑)。 まあ、そのあたりもそういう展開になるだろうということは想像に難くもなかったりしたわけで、尚更、飛ばし読みモードに拍車がかかりました。
ここまで読み進めてきて痛切に感じるのは、ことさらに「逆説」を強調し、学会等の権威筋に喧嘩を売り、時に感情が赴くままに「自己陶酔型文章」を書く彼のスタイルにある種の「ファッション」というか「ポーズ」のようなものが漂っている・・・・・ということでしょうか。 彼の描く歴史観及び目の付け所は面白いだけにそのポーズが何となく「受け狙い」「売れ狙い」という感じがしちゃうんですよね~。
この巻の最初の3章では「へぇ、井沢元彦ってこんな文章も書ける人だったんだ」と感じただけに、ちょっと意地悪な見方かもしれないけれど、この逆説シリーズの基本基調に対してKiKi にはある種の不自然さ・・・・みたいなものがあるように思えてしまいました。
もっとも・・・・・・
逆に言えば最初の3章に関しては「井沢元彦なりの考察が書かれているか?」と問えば、「否。 先達の教えを整理してまとめたもの」という感じもなきにしもあらず・・・・・(苦笑) でも、「整理してまとめる」という作業にしろ、そこそこの知性と忍耐力がなければこれだけの内容のものはそう簡単には書けないんじゃないかと思わせてくれるあたりは、さすがとしか言いようがありません。
さて次は「太平記」の世界を扱う第7巻です。
- 感想投稿日 : 2012年6月30日
- 読了日 : 2012年6月29日
- 本棚登録日 : 2012年6月30日
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