リエゾン ーこどものこころ診療所ー(3) (モーニング KC)

  • 講談社 (2020年12月23日発売)
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感想 : 11
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前巻の続き、お受験から。
緊張でおなかが痛くなった息子に、父親の上から頭ごなしで「自分でやるって決めたんだろ!?」という怒声と
母親の目線をあわせて「今 困ってるの」「どうしたいかパパとママに教えてくれる?」「本当のこと言っていいから」と優しく声掛けする対比。
未来に焦り親の理想の投影と、今の子供の状態に寄り添うという子育ての対比のようにも思えた。に
「受験をさせないほうがよかったのでは?」という疑問に「失敗しても何度でもチャレンジできる」という佐山先生の声掛けは、親も救う。
お受験の会場で一人置いてかれた父親は、そのおかげで内省した模様。帰ってきて祖母に関して父親が「一方的に謝って勝手にすっきりしちゃう人だから」と指摘。
……家族の問題を認識している分、家族は断絶していない。
そしてダイニングテーブルの上に置かれた、サッカーやテーブルゲームといった、対話が必要なゲーム類。
これから家族と向き合う姿勢がうかがえる。

発達障害を持つ子供の就学問題。
来年、就学する少女・希は発達障害の傾向があり、一方的なおしゃべりをしてしまう。
コミュニケーションに難を感じている母親の危惧とそんな希の育児疲れ。
コミュニケーションは自然に身に着けるものではなく、マナーを教える・学ぶもの……
大人になると当たり前になりすぎて失念していた視点を指摘される。
そして、それらは同世代同士だけではダメという事も感じた。
家族というコミュニティが中心で、自分が知っているルールが全てである希は、知らない男の子たちとおしゃべりをしようとして、ルールを押し付け気持ち悪がられる。
子どもだけだったため、顔面にボールを蹴りつけられ捨置いてかれる希……
大人がいればこんなことは起こらなかったかも知れない事態に心が痛む。
就学だけでなく、子供がいじめららないため、大人ができることが沢山あることを助言され、療育しながら就学相談する、支援への理解がある学校を選ぶ。

症例検討会の現場について。
統合失調症を患っている高齢女性の症例。
低ナトリウム血症で一度入院した。原因は多飲症。妄想の中でケプリ様の命令で水を飲むとの事……
しかし、再びし低ナトリウム血症で入院し、今度は水制限は受け入れるという整合性の無さ。
佐山先生は「塩分不足が原因」と指摘。
「一度目の時は真夏で水分不足」(結果、水を大量に飲んでた)
「多分生活習慣病に関する番組でも見て塩分が危ないと思ってしまった」(そのため塩分を極端に控えてしまった)
妄想の内容ではなく、なぜ妄想を見ているのかという事象に着目することとはどういうことかをわかりやすい形で説明していた。

シングルマザーの近所に一時帰宅してきた非行少年。
宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』( https://booklog.jp/item/1/4106108208 )を読んだばかりなので、漫画の中のリアリティがすごい。
「イライラする」という言葉ばかり。(それ以外の語彙が無い)
「他人に共感できない」「後先を考えられない」「自分で想像して確認などできない」という想像力の乏しさに、知的障害の傾向が見て取れる。結果、犯罪を犯してしまう……
その不安を抱えながら、次巻に続く。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 心理学 / 精神医学
感想投稿日 : 2021年12月25日
読了日 : 2021年12月25日
本棚登録日 : 2021年11月28日

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