死とエロスの旅

著者 :
  • 集英社 (2019年6月5日発売)
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感想 : 10
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借りたもの。
NHKの番組を文章化したもの。
アジア・南米で、宗教の原風景が残っている……血と死と神々が生者に寄り添う世界を垣間見る。また、メキシコの性的マイノリティを肯定するキリスト教など、厳格化・戒律化・様式化していない宗教の懐の深さに、一種の情景を感じ得ない。
死を隠さず、エロスを否定せず、戒律に反しているから、マイノリティだからと排除しないのが、本来の神の姿ではないか…?
死後の世界も幸福を願う思いも苦しみを受けてもらうものも全て神(の国)という存在に繋がっている。
己と周りの人々も含め幸福を願い、自然(神)に生かされていることを感謝し、喜ぶ……
死という超えられない運命(時に痛み、苦しみ、それゆえの恐怖を伴うものもあるだろうが)と喪失の悲しみも、その先に幸福があると信じる人間らしさ……

エロティシズムを匂わせる壇蜜さんが、遺体衛生保全士(エンバーマー)の資格を有していると初めて知った。壇蜜さんの死生観……大切な人の死から関心を持つようになったという。
死(タナトス)とエロス…それは生への慟哭への喚起/歓喜に連なるものと私は考えている。
壇蜜さん、死とエロスの旅に相応しい旅人……もっと好きになってしまった。

巻末の壇蜜さん手書き旅ノートが素敵。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 神話 / 宗教
感想投稿日 : 2020年2月14日
読了日 : 2020年2月14日
本棚登録日 : 2020年1月14日

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