主人公の妄想と現実との間隙が浮遊感を誘って、ワクワクするようなドライブ感があり、今までの阿部和重の作品と比べて読みやすい。妄想の強固さとそれ故のドライブ感は阿部和重を読む上で最も楽しい要素であり、それがよく反映された作品であった。
的外れな妄想の現実化が失敗に終わるのは当然であるが、その失敗が主人公にとっては妄想からの解放になる。クライマックスで作戦に失敗し、トキが逃げるのを見ていた主人公が感じた諦観は主人公の成長へと繋がるだろう。そもそも自己と同一視しているトキを殺すという考え自体が主人公をがんじがらめにしているのは明らかである。
警察が車に乗り込んで来た場面で挿入された洋楽の歌詞の効果で、その状況がスローモーションで想像され、映像的な面白さすらあった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年12月31日
- 読了日 : 2019年12月31日
- 本棚登録日 : 2019年12月31日
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