本書には、安倍晋三がとにかく嫌い、それでも支持されているのは衆愚政治に飼い慣らされた国民が馬鹿だから、という前提がまず存在する。
その上で、データやナラティブでそれを裏付ける。正しいだろうなというものもあれば、指揮権密約(自衛隊は有事に米軍の指揮下に入る)や日本が米国に高く評価されるために北朝鮮や中国との安定を望んでいないという類の、ちょっとあり得ない主張も裏付けとして示される。
また、最近躍進中の維新に対しても、間違った政策や主張なのに印象操作で得票を伸ばしているとの評価。その大阪県政の最大の失政は突出したコロナ死亡率だという。気になって少し調べてみると、高い死亡率は事実のようだが、「世帯収入が低い、失業率が高い、小売り・郵送・飲食業の労働者数が多い(朝日新聞)」、「若者と高齢者の生活圏が近い(読売新聞)」などの指摘があり、社会的要因もあるようだ。
その一方で、鳩山政権への評価は高く、維新以外の野党への批判は存在しない。また、何より残念なのは、望ましい政治体制や処方箋についての提言もない。
読書を通じて、そういう見方もできるのかと新鮮な感覚を覚えた一方、主張があまりにも一面的で、自己の主張と反する政治体制となっていることを国民の無知に帰していて、小馬鹿にされた一国民の私としては、あまり気持ちのよい読書ではなかった。
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- 感想投稿日 : 2023年6月12日
- 読了日 : 2023年6月12日
- 本棚登録日 : 2023年6月12日
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