俳句・正岡子規、イラスト・南伸坊、一口コメント・天野祐吉という組み合わせは、時を超越した、ベストマッチのように思えます。
天野祐吉氏は、松山市立子規記念博物館の館長を務めておられ、その後も名誉館長を務められ、2013年に亡くなられたのちの2015年に本書が編集されている。
さすがに館長だけあって、子規の句の読みが深いため、その読みから絞り出される一言には、何とも言えぬおかしさが腹の底から込み上げてくる。
本書の「はじめに」で天野氏が語っている。「俳句はおかしみの文芸です。」と。
俳句の「俳」の字に「おどけ」や「たわむれ」の意味があるとは初めて知ったが、天野氏はそういうユーモラスが伝わってくる句を、あえて約24000もあるなかから南伸坊さんと二人でセレクトされたようである。
それぞれの句ごとに天野氏の短文が添えられているが、「句解」ではなく、思い浮かんだままの言葉だという。これがまたまた可笑しい。ただでもユーモラスな子規の句に、さらにその句を肌で読んだ館長がつぶやく一言は、腹の底から笑いが込み上げてくる。
可笑しさが増幅されて映像となって浮かんでくる。さくらももこさんのエッセイを読んだ時の感触に近い。文章がマンガになって浮かんでくる。
下手なギャグマンガなんぞを読むより、よほど高品質な笑いを体験できる。「笑う子規」より「笑わせる子規」というタイトルのほうがよいくらいだ。
そして時折、どかんと伸坊さんのイラストが出てくる。
こちらも伸坊さんが肌で感じたままのイラストだ。子規のイラストが登場するが、シンプルなうえにそっくりで味わい深い。
選ばれた句からは、子規の日常が見えてくる気がする。
さあ「俳句をつくるぞ」なんて構えて作られたものではなく、自然体の中でひょこっと生まれたような作品がたくさんあった。
「タマキンを団扇の上の乗せた」ところの俳句だとか、「枝豆をびゅっと飛ばして口の中に入れる」ところの俳句だとか・・・。子規は、日常茶飯事、言葉で会話するように、俳句を思い浮かべていたんだろうなと思える。
最後のページは、子規の絶句で終えられているところが館長ならではの編集なのでしょうか。
- 感想投稿日 : 2020年9月5日
- 読了日 : 2020年9月5日
- 本棚登録日 : 2020年8月23日
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