廃墟建築士 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2012年9月20日発売)
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本棚登録 : 574
感想 : 60
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この作者の話のパターンは大きく2パターンある。
奇妙な世界を受け入れ生活している人の視点と、受け入れられず疑問を持つ人の視点 いつも意識して読んでいる。

●「7階闘争」
立て続けに起きた事件、事故が全て7階で起きたことから、全ての7階を排除しようとする運動が高まり、主人公は反対活動に巻き込まれていく話
多分、「7階」を何かに置き換えると、作者の意図が見えるかと思って挑戦してみたが…難しい。しかも解説の方も同じようなことを語ってた(^^;)

現実にも駅前なんかで「なんらかの抗議活動」をしているのを見かけるけど
真面目に向き合ったことがない私にとっては「無意識、無感情、無関心」を怒られているような物語にも読めた。
「となり町戦争の縮小版」のような印象

●「図書館」
「本来は存在しない動物を具現化してみせる能力」を持つ女性が主人公で、
地方の図書館の「野生の姿」を夜間開館で観覧できるよう調教する話
「図書館を調教」と書くだけでかなり違和感があるが、実際にいくつもの紆余曲折を経て調教手段が確立され認知されているかのような世界観で話が進む。他の短編「動物園」の続編

●他「廃墟建築士」「蔵守」の二篇


直感的に現実の生々しいモノと結びつく言葉を、存在しない事象の説明に結びつけることで
作者自身がこの能力をもち
「本来は存在しない事象」を、実態があるかのように見せるている。

そこが毎回面白く、読んでしばらく何度か振り返っては「あれはもしかしたら…」と考えることがある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年11月23日
読了日 : 2018年11月23日
本棚登録日 : 2018年7月7日

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