アサッテの人 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2010年7月15日発売)
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本棚登録 : 584
感想 : 73
5

読書開始日:2022年5月18日
読書終了日:2022年5月29日
所感
とても引き込まれた。
作為から逃避し続けた叔父と、その叔父の気持ちを尊重する筆者の繋がりを、作品に感じる
定型や作為への極度の恐れ。
そこから叔父の奇行が生まれた。
朋子さんだけが、その奇行を受け入れようと悩み、毎度打ちひしがれた。この一連こそが、叔父の定型からの逃避癖と安心を一挙に満たしていた。
朋子さんもいなくなり、奇行が飽和する。その飽和からも逃れるために、新たな奇行と安心を得るために、旅に出た。
と思う。
どこまでも作為無し。
面白い。

スノビズム
木阿弥
まるでジェット機の通過した直後のような重々しい余韻
厭人僻
夫の奇妙な言葉は、意味が這い出したあとの奇怪な抜け殻に過ぎない
佯狂
ポンパ=ブラックホール、意味はないのに、人間を吸い寄せ呑み込む
自家薬籠中
衒学
吃音が治ると、逆に恋焦がれた統一の言語世界が極めて狭隘な領域にみえた。自ら吃音的なものを求めた結果がアサッテ
嚆矢
意味、意志からの離脱。この世は目的概念で溢れているが根本の目的なんてない。落ちていくエスカレーターに初めから乗っている。そこから目を逸らすため血汗涙がある。そんな絶望から逃げたい。アサッテ漢
夭逝
蚕食
朋子がいなくなることによるアサッテの方向が自分になる。うちにうちに向かうどんどん小さくなって、アサッテが飽和する。アサッテの崩壊
作為への病的な恐れ

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感想投稿日 : 2022年5月30日
本棚登録日 : 2022年5月24日

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