四国のある村で立ち上がっていく新興宗教の話。独特の英語表記、鉤括弧を使わない会話表現など文体として取っつきにくい部分はあるものの、ストーリーの駆動力が強くグイグイ読めた。日本は宗教の概念が希薄なので信仰する気持ちを理解しにくいと思う。その中で、この小説は信仰の発生/終焉/再生を描いており興味深かった。
まだ残り2巻もあるので総論的なことは言えないにしても一番オモシロかったのは「一瞬よりはいくらか長く続く間」というフレーズに基づいた説法。宇宙の時間スケールで見て自分の人生を相対化する。死んだ後に流れる時間と死ぬ前に流れた時間は等価ではないか。詭弁のようにも思えるけど、こうやって人間は実態のないものに振り回されながら生きていくしかない。
スピリチュアルな要素は少ないにも関わらず、徐々に大きな意思の存在が確からしいものになるのが著者の筆力なんだろうか。それぞれ役割を持ってそうな職業/特徴の人々が信じることで始まろうとするボトムアップ型の宗教。教祖の施しと人智を超えたものがすれ違う偶然の交差点、それが宗教/信仰の震源地であることがよく理解できた。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2020年1月29日
- 読了日 : 2020年1月28日
- 本棚登録日 : 2020年1月28日
みんなの感想をみる