特製ケース入り『チーズはどこへ消えた?』『迷路の外には何がある?』 2冊セット

  • 扶桑社 (2019年3月1日発売)
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感想 : 1
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多くの方が高評価を付けられていて、ずっと心の隅にあった。こってりした教訓本かと思いきや『モモ』を読み終えた時のようなさっぱりとした後味で、思わず続編にもかじりついていた。

「迷路」の中に住み、いつも「チーズ」を探し求めている2匹のネズミと2人の小人の物語。
本の見返しには「迷路」と「チーズ」のことを、それぞれ「チーズを追い求める場所(会社・地域社会・家庭etc.)」、「我々が人生で求めるもの(仕事・家族・財産・健康etc.)」と定義付けている。
当然、読む人の立場によって「迷路」や「チーズ」の解釈は違ってくる。自分は「迷路=(生活圏も含めた)世界全体」「チーズ=何かしらのチャンス」と捉えていた。

生存するための食料としてチーズを探し続けるネズミ達だが、小人は訪れた変化に躊躇し、あれこれ考え込むせいで何度も足踏みしてしまう。そして新しい考えが浮かぶたび壁に言葉を刻んでいく。我々読者にも気付いて貰おうとするかのように。
本書にはこの物語についてディスカッションする大人達も登場するが、「チーズ」の解釈がみんな多様で面白い。

それから19年後の’19年、続編が刊行された。ストーリーは『チーズはどこへ消えた?』に登場する小人の一人、ヘムの視点で描かれる。前作でヘムは訪れた変化を受容しなかったが、それは大抵の人に当てはまるタイプでディスカッションでも多数の共感を得ていた。(本書でもディスカッションや、一歩踏み出す度に刻まれる言葉が踏襲されている)
ヘムはチーズどころか戻ってこなくなった相棒を探す旅に出るが、やがて自分の信念や「迷路」をも飛び越える試練に見舞われる…

一時期信念が揺るがない人を尊敬していたが、それは頑固なタイプでもあった。往々にしてトラブルも招くので、手放しに感心できるものではない。
ヘムが前作で一歩も動けなかったのは、信念を変えると自分じゃなくなると思い込んでいたからだった。
でも「(必要に応じて)信念を変えたからといって、自分が変わってしまうわけではない」。
色々考えて不安に囚われる必要はないのかも。案外世界にはいくらでもチャンスが、その他のチーズだって転がっているのだから。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年7月21日
読了日 : 2022年7月21日
本棚登録日 : 2022年7月21日

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