わたしが行ったさびしい町

著者 :
  • 新潮社 (2021年2月25日発売)
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本棚登録 : 158
感想 : 13
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いつも行く図書館にイベント棚があり、そこで『旅の本』として紹介されていた一冊。
パラパラと中を見ると、国内外の19の町+夢での町を書いた旅エッセイのよう。
いくつか気になる町があったので借りてみた。

「さびしい町」とは、どうということのないふつうの町のこと。
と著者は書いている。
ごく当たり前に人々が生活している町です。
そしてもちろん、さびしい町が好きだから、このエッセイを書いたのでしょう。

著者の松浦さんはフランス文学者でもあるので、フランスはもちろんの事、多くの国々を訪れている。
これは、かつて通り過ぎたさびしい町のあれこれについての「昔話」だそう。
なので旅の詳細は曖昧なのに対し、くっきりと記憶に刻まれているその町の空気や感じた事などは丁寧に記されている。
そしてほとんどの旅は、奥様と一緒なのが素敵。
連れがいるからこそ出来る体験もあるはず。
中には「まだ妻ではなくガールフレンドだった女性」とのワクワクした旅もあった。(韓国・江華島)
ーーーあの韓国旅行はわたしにとっての「始まり」の……人生にいくつもある複数の「始まり」の……一つだったと今改めて思う。(p190)

どの町も細かく描写されている訳ではないが、奥行きのある文章が心に染みる。
読者は昔話を聞きながら、自分の内側を見つめ、人生と向き合う(振り返ったりこの瞬間を感じたり、明日を想像したり)一冊になるのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2023
感想投稿日 : 2023年5月21日
読了日 : 2023年5月20日
本棚登録日 : 2023年5月20日

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コメント 2件

ひまわりめろんさんのコメント
2023/05/21

アオイさん
こんにちは

図書館企画…侮れないっすよね
言ってみれば本選びのプロたちに素直に乗っかってみることで「自分」っていう狭いカテゴリーでは出会えなかった本に出会う
図書館好きの後醍醐天皇間違えた醍醐味です!(≧∇≦)

aoi-soraさんのコメント
2023/05/21

ひまさん
本当に図書館ってすごいですねー
人気作家の新刊本などはどこでも目に入るけど、こういう地味だけど良質な本ってなかなか出会えない
一冊読んだだけでワンランクアップした気分よ(笑)

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