死体が教えてくれたこと (14歳の世渡り術)

著者 :
  • 河出書房新社 (2018年9月22日発売)
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本棚登録 : 212
感想 : 27
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江東区図書館の「ぶっくなび(2021年3月)」にて紹介。
観察医である筆者が、見るのが辛かった遺体、冷静な医学的初見から解決した事件などの事例と共に、自職の重要さを解り易く語った本。

最も好きなドラマとして思うのは海外ドラマのBones。元々シャーロックホームズやアガサクリスティが好きでハマった推理小説や探偵小説と、病気の原因を見つけ、予防し、治療するという医者は、私の中では同じ方向にあった。ドラマでは稀な事象を更に小難しく見せてくるのかもしれないけれど事実は小説より奇なり。決してそれを誇張としない、より複雑な現実もあると思う。

本著と同時に知ったこの「14歳の世渡り術」シリーズ自体読んでみたいなと思えるラインナップではあったけれど、同様のジャンルと思われる「医者になりたい君へ」とか「14歳からわかる生命倫理」以上に本著の方に興味をひかれた。

いざ読んでみると、考えていたのとは大分異なり、筆者の自叙伝ならびに筆者の仕事との向き合い方に重きを置いて書かれた本で、"検死"や"解剖"そのものの手順とか"症例集"とも少し違っていた。そういう意味では期待とは少し方向性の異なる本だったけれど、それ以上に監察医とか命に係わる仕事とか関係なく、「人として」「親として」「子どもとして」改めて自分の気持ちと向き合い、普段意識していない大事な心持ちをしっかりと見つめ直して言語化するのにいい本だと思う。そういう意味では道徳などの授業で必読書として欲しいような本。

邦ドラマに興味がないので意識したことなかったものの近年監察医などを題材にしたものがあるのは知っていたが、恐らくこの本によればこの方の著書類が火付け役となったのかもしれない。初版の2018年で御年89歳。ただ、この方自身の成果や歩み以上に、この方の根底を育て上げた父上の偉大さが読んでいて身にしみた。よく赤ひげ先生のような、患者にとって良い医者でも、家族を疎かにしたりそのつもりでなくてもそう感じ取られて家族に疎まれ反発される方もいる(はず)。それでも両親の偉大さを感じ、素直に尊敬し、愛情もしっかりと受け止められる子供を培えた器の大きさ、これは子供をこれから産む人や、育てている人も「先に」読んでおくといいだろうな。

■8荷(はっか)の法則
著者が文中で紹介した「警察の捜査の仕方」。但しこれは監察医という職業柄必要とか言う事ではなく、たまたまその内容が筆者の父の教えとなった、「自分の目でよく見て、頭で考えるように」というものと本質が同じであり、筆者が監察医となってから"考えるために"利用してきたこと。私が物事を考えたり言語化する際に意識する、5W1Hみたいなものだな。

いつ 時間(When)
どこで 場所(Where)
誰が 犯人(Who)
誰と 共犯(≒with)
なにゆえに 動機(Why)
誰にたいし 被害者(Whom)
いかにして 方法(How)
いかにした 結果(≒What)

また、筆者が書いた本来の書?である下記のものも読んでみたいな。
「死体は語る (文春文庫)」
https://booklog.jp/item/1/4167656027

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自分用
感想投稿日 : 2021年11月21日
読了日 : 2022年3月27日
本棚登録日 : 2021年11月21日

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