朝日新聞でもおなじみの丸山才一さんの長編小説です。
500ページもありかなりの読み応えでした。
中国なのか?独立国家なのか?
揺れる台湾問題を背景に、漠然とした「国」の枠組みが浮き彫りになってきます。
日本の国を象徴するものといえば「君が代」と「日の丸」があります。でも、この二つ、原初をたどると恋歌と農耕文化。実はイデオロギー的主張は薄いものなんだそうです。
欧州ではこの主張は明確で、EUの効率的運営を定めたリスボン条約締結の際には、EU各国の統一感を高めようとEU歌やEU旗を設置する動きがありましたが、各国の反対で結局除外されました。それだけ、欧州諸国の国旗、国家に込められた主義主張は重く明確だということなんです。
小説からは、この曖昧とした日本の近代国家として主張、枠組みへの歯がゆさが伝わってきます。
でも、ここが救いでもある。
国家観には「理想」と「現実」の2面性があります。この理想を実際に現実にすると国は暴走する。ナチスドイツや共産主義などのように。日本もかつて太平洋戦争の時におなじ過ちを犯しました。
曖昧な形できた日本の国家観、とくに今の時代、世代間、個人間で国家観はバラバラなような気がします。
「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」(寺山修司)
今この時代にどのような国家観を持つべきなのか。この小説を読んで考えてみるのも一興です。
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カテゴリ:
小説(日本)
- 感想投稿日 : 2008年11月17日
- 本棚登録日 : 2008年11月17日
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