家は生態系―あなたは20万種の生き物と暮らしている

  • 白揚社 (2021年2月19日発売)
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ぼくは緑が好きで自分の部屋中に鉢を置いたり天井からぶら下げたりしているんだけれど、ほとんど温室みたいになって知らない人が見たらだいぶ引きそうな状態になっている。水やりに毎週1時間くらいかかるのも好きでやっているんだし、部屋の中に落ち葉が積もるのも邪魔だったら掃除すればいいので気にならない。
ただ、ポトスやヘデラといった観葉植物と一緒に、変な生態が好きな食虫植物の一群も暮らしているのだが、こいつらは水が好きで、腰水にしていたらそのせいかコバエが湧いてしまった。別段コバエが好きなわけでもなく、かといって殺虫剤をまくのもイヤだなとちょっと困っていたら、食虫植物のモウセンゴケやムシトリスミレがコバエを捕まえていた。おお、ぼくの部屋の中で大自然の生態系が回っている、とちょっと感動した次第。

前置きが長くなったが、著者は人間の家に住んでいる生き物を研究している人。生命科学の研究者はアマゾンやらコスタリカやらの秘境に行きたがる人が多いらしく、家の中の生き物については、せいぜいがゴキブリやっつける方法を殺虫剤メーカーが興味を持つくらいで、あまり研究者がいないらしい。で、ホコリなどを拭って調べてみたら、小さい動物や昆虫だけでなく、菌類や細菌なども含めると20万種におよぶ生き物がぼくらと一緒に家の中で暮らしているそうだ。20万種という数はDNA分析によるものだが、大部分は生態はもちろん、分類も名前すらはっきりしないやつが相当混じっているらしい。これに人間やペットが腹の中で飼っている腸内フローラなどを加えたら、さらに大変な数になりそうだ。
その中には人間を病気にするような、悪さをするやつも混じっているが、その割合はごく小さく、大部分は影響もはっきりしない。除菌薬やら消毒薬はよく除菌率99.7%などと謳っているが、あれ大丈夫なのかと前からちょっと気味が悪かった。悪さをする微生物だけを99.7%除去するわけではなく、いいも悪いも無差別に一掃してしまうのだろう。それはそれでなにか悪い影響を及ぼすことはないのだろうか?

ペニシリンを嚆矢とした抗生剤が多くの命を救ったのは事実だし、消毒の概念が同様に多くの疫病阻止に役立ったのも確かだ。著者が慎重に結論を避けているように、こういうのは白黒どちらか一方の結論が正解とは限らない。とにかく自然が一番、というわけでもない。その一方で、もともと動物としての人間が生きていた環境を、極端に変えてしまうことに対する躊躇や怯えは忘れないようにしようと思う。
ちなみに、ぼくのPCの液晶ディスプレイの上をたまにアリンコが行ったり来たりして邪魔くさいんだが、こいつらはどうしたらいいんだろう?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自然・科学
感想投稿日 : 2022年6月12日
読了日 : 2022年6月12日
本棚登録日 : 2022年6月12日

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