60歳か65歳か、いずれにしてもわれわれサラリーマンは、どこかで「区切り」がやってくる。「明日からもう来なくていいよ」と言われるのだ。といっても、会社を辞めたら即死するわけではない。健康ならその後に15年なり20年なりの「何をしてもいい時間」が待っているわけだ。その時間をいかに有意義に、いきいきと過ごすべきか、その心得を記した本。この手の本には珍しく、投資などの財務系の話は出て来ない。たとえば趣味、たとえば起業、たとえば定年後の自分の居場所をいかに確保すべきか、という心構えの本だ。
ただぼくは、あまり前向きに読む気分になれなかった。もらっている給料なりのベネフィットを会社に与えるつもりで、数十年、ぼくなりに努力もし、苦労もし、嫌なことも嫌な顔をせずに引き受けてきた。それはたぶん「有意義」だったのだろうし、傍からは「いきいき」して見えたのではないかと思う(実はいきいきしていなかったという意味ではない)。でも会社を辞めたあとも死ぬまで、環境が変わるだけで、誰かのために「努力をし」続けなければならないのは嫌だな、と思ったのだ。
仕事のほかにやりたいことがあるのなら、何も定年を待つ必要もない。さっさとやってしまわないと、定年前に死んでしまったら丸損だ。
ぼくは定年後に、何もしないでごろごろしていたいと思っているわけではない。いままでやったことのないことをやってみたり、なんの役にも立たない勉強をしてみたり、別に何もしないでごろごろもしよう。退屈するかどうか知らないが、退屈するというのも一つの贅沢だと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
歴史・ドキュメンタリー
- 感想投稿日 : 2022年7月17日
- 読了日 : 2022年7月17日
- 本棚登録日 : 2022年7月17日
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