これも母がガンで急逝したことをきっかけに読み始めました。これを読んで「癌という病気にだけはなりたくない」、「癌という病気でだけは死にたくない」と骨身に染みて思いました。
この上ないキツイ治療の連続にもかかわらず、治るどころか着々と蝕まれていく肉体、刻一刻と迫り来る死への恐怖に心まで追いつめられてゆく。どんな我慢も努力も苦労も報われない、そんなガンの恐ろしさを「ガン病棟のピーターラビット」とともにこれでもかというほど思い知らされました。
母が亡くなるときもそうだったけど、癌という病気はまるでエイリアンのようです。誰がどこから見ても死ぬとは思えない、本人でさえ死ぬなんて絶対に思えないほど、気力だけは活き活きと満ち溢れた状態のまま、癌という訳のわからぬものに体を侵略され、もっともっと生きていたいと叫びながら殺されていく・・・。
とにかく「無念」・・・その言葉に尽きます。「転移」の最後の手書きノート、パソコンの「ま」→改行の印字、何もかもが「まだまだ生きたい!!生きてやりたいことがいっぱいあるのに!!」という無念の叫びが伝わってきます。
◆追記◆
一度読み終わったあともう一度何気なくパラパラと読んでみたら、最初に読んだときより不思議と面白く読むことが出来ました。気付けば中島梓という作家に惹き込まれ始めていました。
普段自分は小説というものを読まない人種なのですが、ここにきて初めて「さすがはベテランベストセラー作家だなぁ」としみじみ感じとることが出来ました。
なんていうか面白いというか上手いんですよね書き方が。ひとつひとつの言葉の流れや言い回しがまるで「あずさ節」のように耳に心地よく響いてきます。
末期ガンという暗い内容であるのに、彼女独特の節回しがかかるとたちまち躍動感にあふれ彼女の世界がどんどん広がってゆきます。
自分が小説とかを読まない理由がほとんどの場合「長い」イコール「めんどくさい」からですが、しかし彼女の作品はちっとも長さを感じない。いくらでも読んでいられるし読んでいたいと思わせる。そこがベストセラー作家の実力なのでしょう。きっと自分は今までつまらない作品ばかりに出会っていたのだろうなぁと思います。
この本の最後は彼女の最期と重なっており、この本自体もまさに絶筆となっていますが、有名なグインサーガとともに彼女の死は非常に残念なことであったと心から思います。
- 感想投稿日 : 2014年10月28日
- 読了日 : 2014年10月28日
- 本棚登録日 : 2014年10月28日
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