チープ・シック: お金をかけないでシックに着こなす法

  • 草思社 (1977年4月1日発売)
3.62
  • (15)
  • (23)
  • (35)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 422
感想 : 27
5

下手に感想を書くより、序文と巻末にある片岡義男のあとがきを読んでもらったほういいのでそのまま書きます。  

あなた自身が、自分のために自分で創りだす服装のスタイルについて書いてみたのが、この本です。ファッションメーカーに命令されて服を着る時代はもう終わっています。  

自分が何を着れば本当の自分になるのか、どんなスタイルをすれば自分がいちばん引き立つのか、最もよく知っているのはなんと言ったって自分自身です。  

あなたの服装は、あなた自身が自分で選びとっている自分自身の生き方にぴったり沿ったものであるべきなのです。ファッション雑誌の反映になってしまってるなんて、とても生き方とはいえません。  
調和の良くないいろんな服を、ごちゃまぜにいっぱい持つのは、やめましょう。着ていてとても気分の良くなってくるような服を、数少なくてもいいからきちんと揃えて、自分のスタイルの基本にしましょう。身に着けていると気分が良く、自分に自信が湧いてきて、セクシーになり、素敵に見えてハッピーになれるような服を、昔からの仲の良い友達のようにいつまでも大事にしていくのです。  ファッションの大量生産と大量マーケティングによって、まちがった、ろくでもないファッションが、私達の衣装ダンスの中に大量につめ込まれています。  

ありとあらゆるファッションにいつも取り巻かれている私達は、あれやこれやとただやみくもに買うだけです。自分の基本的なスタイルとか、どんな服が自分にとってほんとうに必要なのかということを全く考えなくなっています。  

しっかりとした主張のある、素敵な装いをしていると、気分が高揚してきます。くだらない服をごちゃごちゃと持つのをやめにすると、生き方まですっきりしてきます。自分自身を喜ばせるために、服を着て下さい。うまくいった時にはまわりの人たちもそんなあなたに嬉しくなっていきます。  

現代に生きるあなたの服をどんなふうにしていけばいいかに関しての、重要な事柄をこの本は全て抑えています。内容を、かいつまんでお紹介しておきましょう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


ー 片岡義男ー僕がこの本を読んだ感想  

服装はその人の生き方の反映だ、という著者の説には、たいていの人が賛成するだろう。自分が何をやろうとしているのか、何をやりたいと思っているのか、はっきりと定まっていれば、そのような自分を反映してあ、その人なりの実用性に満ちた美しい服装がうまれてくるはずだ、と著者は言っている。服装に関して、いつもお金やエネルギーをこれと言った定見もないままに注いでいるのは馬鹿げたことだから、自分の生き方に合った実践時用の服装哲学をはっきりと持ち、それにしたがって服装を整え、後はもう服のことなんか忘れてしまい、自分自身の生き方を真剣に創造しておくことにお金やエネルギーを使おう。この本全体を通して、著者はこんなふうに提案し、自分で見つけた具体的なきこなしのためのヒントを、数多く展示している。こういった服装哲学をその土台から支えているのは、馬鹿げたものは一切買わないという、徹底した一つの態度だろう。無数にある商品の中から、本物だけを厳しく選びぬき、その本物をいつまでもながく着続ける、という態度だ。ジーンズやカウボーイ・ブーツ、Tシャツのような、機能的で着やすくしかも美しい服をベーシックとして基本に据え、ヨーロッパの非常に伝統的な、すでに時間や流行を超越してしまったクラシックな服を、気品と実用を兼ねて取り込み、さらに、個性的な着こなしのいろどりとして、世界各地の民族衣装を巧みに利用する。この本で展開されている安くてシックな着こなしのガイドは、簡単にいえばこういうことなのだ。これを、自分の生き方と重ね合わせて徹底させていけば、馬鹿げたものは本当に何一つ買わなくなってしまうだろう。馬鹿げたものがあまりにも多すぎる今、この本は単純だけれども重要なことに目を向け直すきっかけになると、僕は思う。今アメリカに生きている若いアメリカ女性が書いた本だから仕方ないとは思うけれど、視点はアメリカが中心になっている。アメリカが生み出した機能的な作業衣ないし作業衣と呼んで差し支えのないような服の、より快適で気分のいい着こなしのために、ヨーロッパの伝統と世界各国の民族衣装が利用されていく。このような考え方は、日本でも、若い人たちの間で、効果的な実用性をすでに持っている。あくまでもアメリカが中心となっているのがなんとなく気に入らないけれど、着ていることを忘れさせられるほどに機能的な、それでいてある種の美しさを持った日常の服を、なにかさがそうとすると、結局、アメリカのもの、あるいは、元をただせばアメリカのものである服に落ち着いてしまうことになる。なぜそうなるかというと、日本にいいものがない、という単純な事実のせいであったりする。自分にとって何がほんとうに必要なものであるから、決めるのは、自分の生き方の中から生まれてくる必然性なのであり、たまたまどこかの店で見かけた商品の、商品としての魅力や出来の良さではないのだ、という著者の説得は、ほうっておけばなにも創造的なことをやらなくなってしまいかねない都会ぐらしの人たちが、なんとか自分だけのものを自分で創っていこうとするときのための、ごく身近なきっかけの提示であるようにも思える。身の回りにある様々なガラクタをそぎ落とすことをまず自分の服装から始めようと提案する著者に、いろんな意味で、都会の匂いを僕は非常に強く感じる。 片岡義男 1977年初版発行

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年4月14日
読了日 : 2012年3月22日
本棚登録日 : 2011年10月20日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする