ツァラトゥストラは こう言った 上 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (1967年4月16日発売)
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感想 : 6
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岸見アドラーの"嫌われる勇気"やamazarashiで批判されているニーチェのニヒリズムが如何なるものか興味があり購入。

本書の構成は聖書に基づいているようですが、馴染みがないため、言い回しや抽象的な表現がしっくりこず難解でした。

ツァラトゥストラという人物の語り口で終始抽象的な表現が繰り返されているため、理解するために何度も文章を読み直すことになりました。

最後に訳者の解説があり、そちらで分かりやすくまとめられているので理解するのに助かりました。

ツァラトゥストラの説教として、何度も出てくるのが
・創造への渇望
・神への批判
それが、ヨーロッパのキリスト教が力を失い、人々が意味と価値の究極のものを見失う時代に自らが意味、価値を創造する力をもつことが必要だとニーチェが考えたのだと思います。

私自身が特に注目した箇所は、
第一に
・戦争や闘争は必要悪である。徳どうしの妬み、不信、誹謗は避けがたい。
・犯罪者を「敵」と言うべきであって、「悪人」、「罪人」と言うべきではない。
創造こそ理想であり、戦争や犯罪さえも創造する力の発露と考えて肯定しているように思われ、狂気を感じました。

第二に
・わたしが愛するのは、人から感謝を求める気持ちもなく、返礼などを知らない者。
・「何もかも自分のため」は退化である。
とあり、これはアドラー心理学とも共通しており、共感ができました。

第三に現代の人に関して
・人間のかたちをした、信仰の否定そのものである。無信仰がふさわしい者である。
・何も産み出す力がない。
・一切は滅びるに値する。
このことは今の時代の人、自分自身にも思い当たる節がありました。まるで現代の無気力・無関心の社会を批判しているかのように捉えられました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年1月10日
読了日 : 2018年1月10日
本棚登録日 : 2018年1月1日

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