二十代の初めに、一度読もうとして途中で挫折し、それから恐らく二度とくらい買い直して、それも読まずに古本屋に売って、何ヶ月か前に購入したのを、やっと読んだ。
僕は買った本は全て、最初から最後まで読むことにしているが、この本はなぜかなかなか途中から読み進めず、挫折したのだ。
多分、大江健三郎の文章(文体)に着いて行けなかったのだろうと思う。
しかし、今回思いがけなく面白く読んだ。
僕が読むのだから、見当はずれだったり、真意を汲み取れずに読んでいる箇所も多いだろうが、それまで大江作品に感じたことのない笑いの要素を、所々に感じた。
大江自身の作による詩と、オーデンとブレイクの詩をモチーフにした三つの短編と二つの中編が入っている。
「父よ、あなたはどこへ行くのか?」の「俳骨湯麺とペプシコーラ」というフレーズが、とても面白かった。
脳に障害のある息子とその父親の自分が、一方的であるけれども感じる息子との共感。
それを象徴しているようだが、ギャグのようでもある。
現実に脳に障害のある子供を持って、その日常を小説に書くとして、このような表現方法で作品が書けること自体が、天才である。
やっとなんとか大江の作品を読めるくらいまでにはなったかと、自画自賛しているところだ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年7月6日
- 読了日 : 2022年7月6日
- 本棚登録日 : 2022年7月6日
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