われらの狂気を生き延びる道を教えよ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1975年11月27日発売)
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本棚登録 : 484
感想 : 32

 二十代の初めに、一度読もうとして途中で挫折し、それから恐らく二度とくらい買い直して、それも読まずに古本屋に売って、何ヶ月か前に購入したのを、やっと読んだ。
 僕は買った本は全て、最初から最後まで読むことにしているが、この本はなぜかなかなか途中から読み進めず、挫折したのだ。
 多分、大江健三郎の文章(文体)に着いて行けなかったのだろうと思う。
 しかし、今回思いがけなく面白く読んだ。
 僕が読むのだから、見当はずれだったり、真意を汲み取れずに読んでいる箇所も多いだろうが、それまで大江作品に感じたことのない笑いの要素を、所々に感じた。
 大江自身の作による詩と、オーデンとブレイクの詩をモチーフにした三つの短編と二つの中編が入っている。

 「父よ、あなたはどこへ行くのか?」の「俳骨湯麺とペプシコーラ」というフレーズが、とても面白かった。
 脳に障害のある息子とその父親の自分が、一方的であるけれども感じる息子との共感。
 それを象徴しているようだが、ギャグのようでもある。
 
 現実に脳に障害のある子供を持って、その日常を小説に書くとして、このような表現方法で作品が書けること自体が、天才である。
 やっとなんとか大江の作品を読めるくらいまでにはなったかと、自画自賛しているところだ。
 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年7月6日
読了日 : 2022年7月6日
本棚登録日 : 2022年7月6日

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