近代日本一五〇年――科学技術総力戦体制の破綻 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2018年1月20日発売)
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知識量がすごい。本書では特に、各章のまとめ方が予備校講師だけあってうまい。
「福沢(諭吉)自身、その過大な科学技術幻想にとらわれていたのであり、その幻想は以降150年にわたって日本を呪縛することになる」
「(滝川事件や天皇機関説論争を経て、)天皇や国体を盾にとれば、どんな不条理もまかり通る時代になっていったのである」
「科学技術の急速な振興と、それによる急ピッチの生産拡大は、その背後でつねに弱者に対する犠牲をもたらしてきたのである」
「憲法改正が日本を戦争の出来る国に導くのに加えて、軍需産業の重視は、それをこえて日本を戦争を望む国へと誘うことになる」
自由世界で米国に次ぎGNP2位になったのが1968年、その後の日本丸のかじ取りを冷静に分析して、評価&反省することにも意味がある。

著者プロフィール:
1941年、大阪に生まれる。1964年東京大学理学部物理学科卒業。同大学大学院博士課程中退。現在 学校法人駿台予備学校勤務。
著書『知性の叛乱』『重力と力学的世界』『演習詳解 力学』(共著)『新・物理入門』『熱学思想の史的展開』『古典力学の形成』『解析力学』(共著)『磁力と重力の発見』(パピルス賞・毎日出版文化賞・大佛次郎賞)『一六世紀文化革命』『福島の原発事故をめぐって』『世界の見方の転換』『幾何光学の正準理論』『原子・原子核・原子力』『私の1960年代』『近代日本一五〇年』(科学ジャーナリスト賞)『小数と対数の発見』(日本数学会出版賞)。
編訳書『ニールス・ボーア論文集(1)(2)』『物理学者ランダウ』(共編訳)。
訳書 カッシーラー『アインシュタインの相対性理論』『実体概念と関数概念』『現代物理学における決定論と非決定論』『認識問題(4)ヘーゲルの死から現代まで』(共訳)ほか。
監修 デヴレーゼ/ファンデン ベルヘ『科学革命の先駆者 シモン・ステヴィン』中澤聡訳ほか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年4月27日
読了日 : 2021年4月27日
本棚登録日 : 2021年4月27日

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