P.F.ドラッカー―理想企業を求めて

  • ダイヤモンド社 (2007年6月1日発売)
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本棚登録 : 190
感想 : 22
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著者の傑作「マービン・バウワー」を読んだドラッカー自らがリクエストして書かれた「ドラッカー完結編」のはずだったが、読み物としての面白さという点ではイマイチでした。むしろ、P&GのCEOラフリーの謝辞の言葉の中で語られるドラッカーの5つのエッセンス(顧客重視、実践、本質をつかむ洞察力、リーダーの責任、人間重視)と序章の内容(ドラッカーは思考を刺激する存在だとか、彼の信念や哲学)を押さえておけば本書は十分です。
その原因は、ドラッカーとしては(おそらく)純粋な伝記でも自伝でもなく「マービン・バウワー」的偉大な功績まとめが期待されていたはずだったのに、各章に入ると既に語りつくされているドラッカーのノウハウ本の域を出ていない点ではなかろうか。本人から直接聞けるという絶好の機会なので、今までどこにも書かれていない彼の思想や哲学が結実した背景を探ってほしかった。
年齢的にも最後のインタビューであろう彼の貴重な時間をこのような内容で終わらせた筆者の責任は重い。
とはいえ、あとがきにも少し触れられているが、やはり取材対象が偉大過ぎて、「こうすればもっとよくなる」という自説を主張しきれなかった点にあるのではと推察するが、これではやはりプロとは言えない。
まあ、ないものねだりしてもしょうがないので、最後に1点のみ。
「事業そのものの内容が変化しつつある。もはや企業が売っているものは製品ではない、サービスである。もはや競争相手は存在しない。より多くの選択とよりよいサービスがありうるだけである」
一読すれば、なるほどと思わされるが、よく考えると、「より多くの選択とよりよいサービス」の競争が始まったともいえるわけで、競争相手がいないわけではないことに気づく。
「顧客が必要とするものを提供するには2つの原則に従わなければならない。第1に、強みとすることだけを行わなければならない。第2に、その他のことについては、それを強みとする者とコラボしなければならない」
考えれば、当たり前ですよね。
こうした彼の名言チョイスもベストだとは思えない。
いろいろな意味でとても残念な本です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年4月23日
読了日 : 2021年4月23日
本棚登録日 : 2021年4月23日

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