自分で本を書くような成功者のサクセスストーリーには必ずおいしいいくつかの修羅場があります。
こんな困難を切り抜けてきたと、その困難がきつければきついほど自慢できるという寸法です。
そんな成功伝からも、もちろん得るものはあるのでしょうが、本書の趣はかなり異質です。
もちろん、タイトル通りに大きな困難が待ち受けていますし、それをうまく克服もしています。
大きな違いは、自身の経験を有意義な経験則に落とせる能力でありそれを過不足なく表現できる文章力です。
文章力については翻訳者のうまさもあるのかもしれませんが、とにかく読みやすくて面白い。
内容については以下に少し印象に残った言葉や話を列挙してみます。
「ひと、製品、利益の順で大切」(P145)
「大組織においては、どの職階においても社員の能力はその職階の最低社員の能力に収れんする、これをダメ社員の法則と呼ぶ」(P226)
まあ、ボトルネックの人間版ですね。
会社がつぶれそうになった時、投資家のハーブ・アレンが助け舟を出したが、テクノロジー企業には投資していなかったのになぜ我々を助けたのか?と後日彼にその理由をきいたところ、「多くのCEOは苦境になるとそこから逃げようとするが、君たちは私に会いに来て、決意をみせた。勇気と決意に投資するのが私の流儀だ(意訳あり)」(P277)などは、感動的な場面です。
会計事務所アーンスト&ヤングの裏切りのエピソード(P336)は、本書が売れれば売れるだけ会社へのネガティブキャンペーンとなりますねえ、仕方ないけど。
捨てる神あれば拾う神あり・・まさに会社経営には何があるかわかりません。
2015年に発売されて数々の受賞をしている作品だけのことはあり、読み応えばっちり、そして読めば必ず得られるものがあるはずです。
満点に近い星4つです。
- 感想投稿日 : 2019年2月8日
- 読了日 : 2019年2月8日
- 本棚登録日 : 2019年1月25日
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