これは、ミステリー?
推理物としての読み物ではない。映像化前提と知って納得。文字として読むには、あまり内容に奥深さを感じない。展開が派手なだけ。
科学的に100パーセントの根拠を得て犯人を探せるというシステムの発想や設定は面白い。また、多重人格という現実的と非現実的のギリギリのラインの設定を、科学的な概念のみを信じる科警研の研究者である神楽の特徴に含ませたのも面白かった。リュウの見ていた(会っていた)スズランが兄妹の妹で、それが実は事件の真相において重要なキーであり、スズランという非現実的な存在の形が明確になって物語が帰結したのは、読んでいて気持ちがよかった。
ただ、やはり全体的に派手なだけで奥深さに欠ける。警察上層部は、ここでいえば歴とした犯罪者であるはずなのに、なんだか「ただの悪い大人たち」というような、詰めの甘いラスト。多重人格はきちんとリアリティのある帰結をしたのに、本としてはどこか首を傾げたくなる、気の抜けた無理矢理ハッピーエンドな本。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー
- 感想投稿日 : 2012年5月25日
- 読了日 : 2012年5月24日
- 本棚登録日 : 2012年5月25日
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