ピエタとトランジ (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2022年10月14日発売)
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本棚登録 : 463
感想 : 28
5

頭脳明晰なトランジは殺人事件を誘発する体質の持ち主で、周囲でどんどん人が死んでゆく。そんなトランジと、彼女の助手であり友人であるピエタのロマンシス小説。
『おはなしして子ちゃん』に収録されていた『ピエタとトランジ』の続編であり完全版です。

ずっと文庫化楽しみにしていたので、珍しく発売してすぐに読みました。
短編集に収録されていた話はピエタとトランジが高校生の時初めて出会った時の話で、こちらはその後の2人、高校を卒業してから大学、就職などのライフイベントを経て、老人になるまでの人生を描いています。
もちろんその間でも2人の周りでは人がどんどん死んでいき、高校の卒業時には全校生徒が半数以下になっていたり、大学の寮もほぼ全滅。2人の存在は世界の危機へと繋がっていきます。
見ようによっては、とても綺麗な滅亡の形かもしれない。滅ぶのは世界ではなく、人間だけだから。
そんな右を向いても左を向いても事件や事故が起こる世界の中、どこまでもどこまでも2人で駆け抜けてゆく、疾走感のあるロマンシス小説。
とんでもない世界観なんですが、2人の関係性、互いが互いにとってどうしても必要な存在であるという姿にぐっときます。時を経ても変わらない関係・気持ちと変わっていく世界の対比も美しい。
老人になった2人も出てきますが、それでも最強の「ガールズ小説」だと思います。

ピエタもトランジも、森ちゃんという新しく出てきたキャラクターもそれぞれとても魅力的なのですが、私は特にピエタがとても好きで、最初の短編でピエタは若く可愛く奔放で、若さゆえにトランジとトランジの引き寄せる破滅に惹かれるようなイメージで描写されているのかと思っていたのですが、年をとってもどんな経験を積んでも変わることなく、どこまでも美しく自由で奔放で、「今までの人生で今が一番輝いてる!」と自信を持って言えるピエタがとても素敵でした。

表紙がピンク色の背景のドクロの隠し絵というのも、甘さと不気味さがあって可愛いですよね! ちょっとラノベ感のあった単行本の表紙も良かったですけど、こちらの方がイメージに合ってる気がします。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エンタメ
感想投稿日 : 2022年10月20日
読了日 : 2022年10月20日
本棚登録日 : 2022年10月20日

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