鉄道関連の花形と言えば運転手であり、車掌であり駅員である。もちろん、スジ屋と呼ばれるダイヤ管理のスペシャリストや車両点検の技師などもファンにはたまらない隠れたヒーローだろう。
そんなスポットライトから少し外れた存在、線路を守る保線手を主人公に据えたのが本作だ。
時代は昭和初期、煤にまみれ、風雨に打たれ枕木を砂利を点検する主人公を僕たちは目にする。事故に遭い、彼に救われた商家の令嬢、櫻子。彼女の家業への蟠りを、直向きに仕事に向かう主人公を、そして優秀な商人である櫻子の父の姿を見て、当たり前のことに気づく。運転士・車掌・技師・スジ屋・保線手、補修工事の作業員、そのどれが欠けても列車は安全に運行できず、そしてその「繋がり」はもっと広く遠くまで続いていることを。
惜しむらくは後半の収束部がやや説明不足で、そのせいもあり安直に見えたこと。あの人物の動きなどもう少し前半から伏線を織り込んでくれていれば、また違った見方も出来たんじゃないかと思う。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
恋愛小説
- 感想投稿日 : 2011年6月13日
- 読了日 : 2011年4月26日
- 本棚登録日 : 2011年6月13日
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