終焉をめぐって (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社 (1995年6月5日発売)
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柄谷行人の「終焉をめぐって」の「村上春樹の風景-『1973年のピンボール』」の章では、村上の作品はポストモダンではなく、まっとうな近代文学であり、それは国木田独歩から始まる『風景』を描いている小説であるという批評がなされていた。柄谷が言うように超越論的で独我的な魂は安全な場所に置かれたまま大きな意味のある歴史は終わった、つまり『喪失』として村上の小説は描かれる。そして、そこには内面の闘争はない。彼はそれを反復させていく。ある意味での近代文学にあったものとして。内面との闘争とはつまり、世界との闘争と言い換えることができる。村上の小説的な風景は今日では当たり前のように日本に存在している。そのような時代に生まれ育った若い作家の作品がライトノベルと呼ばれ、さらに若い世代に需要されているのは潮流として当然の帰結であろう。しかし、それがすべてではない。虚構の空間に閉じこもり反復を貪るか、世界に負けても尚戦い挑んでいくか、私は後者でありたいと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学評論
感想投稿日 : 2010年11月1日
読了日 : 2010年9月18日
本棚登録日 : 2010年9月18日

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