「ジェノサイド」を読み終えてから約2年3ヶ月、ようやく2作目として手にした本書は高野和明氏のデビュー作にて第47回江戸川乱歩賞受賞作。
死刑確定囚の冤罪を晴らす!これが本作の本筋です。
そんな物語のW主演は刑務官の南郷、そして殺人者としての十字架を背負った青年三上。
敢えてW主演でいいと思います。
それほどにこの2人の設定も素晴らしい。
いつ刑が執行されてもおかしくない状況で「階段」という手掛かりから真犯人を探す調査が始まります。
単なる謎解きミステリーといってしまうのは勿体無い。
確かに物語の後半で浮かび上がる犯人像は二転三転し、なるほどなぁって感心させられるのですが、本作はそれだけではなく、殺人や死刑、法といった問題にも疑問を投げかけ、真正面から向き合っていきます。
その中で苦悩する南郷と三上、たとえ罪に問われないとしても、刑期を終えようとも、背負い続ける十字架は終身刑と言っても過言ではない。
目を背けたくなるような刑場での絞首刑執行シーンと執行する刑務官の苦悩、法と執行命令の関係など多くの読者が死刑という制度についてもそれぞれに感じだことがあると思いますし、三上の回顧録ともいえるラストで明かされた過去の殺人事件においても読者それぞれに考えさせられたことでしょう。
個人的には「ロスト・ケア」(葉真中顕)が社会派ミステリー最高傑作と思っていますが、本作も間違いなく社会派ミステリーの傑作。
ただし、読み終えて思い出したのは「Aではない君と」(薬丸岳)でした。
説明
内容紹介
宮部みゆき氏絶賛!!!
手強い商売仇を送り出してしまったものです。――(本書解説より)
犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。2人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。
内容(「BOOK」データベースより)
犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。二人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
高野/和明
1964年東京都生まれ。’85年より、映画、TV、Vシネマの撮影現場で経験を積み、岡本喜八氏の門下に入る。’89年渡米し、ロサンゼルス・シティカレッジで映画演出、撮影、編集を学ぶ。’91年に同校を中退。’01年に『13階段』で第47回江戸川乱歩賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
- 感想投稿日 : 2023年3月14日
- 読了日 : 2023年3月14日
- 本棚登録日 : 2021年4月19日
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