ブラックボックス

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2013年1月4日発売)
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本棚登録 : 669
感想 : 127
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考えていたら「女たちのジハード」から長く読んでいませんでした。社会派からホラーまで幅広い作家さんで、これはバリバリの社会派です。
食の安全が揺らいでいる昨今を描くリキの入ったハードパンチです。カット野菜、カップサラダの先進工場で何が行われているのか。技術革新によって生まれた無菌で太陽光を一切浴びず出荷される野菜。そして足りない味を補う得体のしれない液体調味料。皆が気が付かないうちに地域に広がる不気味な病気。
スキャンダルで名声を奪われた女性が、故郷で偶々ハイテクサラダ工場で働く事から次第に不穏な事件が始まります。恒常的に製造された食品を食べている従業員に異変が。おかしいと思いながらも生活の為に目をつぶろうとするが・・・。
サラダ工場以上に、野菜工場ともいえるLED光での野菜製造の描写が薄気味悪く、この本を読むとコンビニとかスーパーのカット野菜に不信感を抱く事間違いなしです。
ある意味一方に傾いた考え方の小説と言えない事もないですが、そもそもどんなにしっかり管理されていても先進性、専門性が先行する限りブラックボックス化は避けられないので、がっちり自衛して選別していくしかないのかもしれません。
ただ、日本の農薬使用量は世界でトップクラスで、中国よりも沢山の農薬を使っているという現実があります。世界で危険視されている添加物も日本では使って認可されていたり、凶悪な除草剤成分グリホサートは日本ではむしろ奨励されていて、薬局でも大々的にラウンドアップ売り出されているし・・・。

話は逸れましたが、企業が犯してきた健康被害は枚挙に暇がありません。技術が進んで不自然な事を推し進めるごとに、どこかにしわ寄せが来ます。そんな怖さをじっくりじっくり書いた本です。もう少し圧縮した方が良かったような気がしますが、意義としては高いし、考えさせられる本である事は間違いなしです。

ちなみに売っている野菜サラダが何故あんなに変色しないのか。それを考えたことも無い人は多いと思います。次亜塩素酸という漂白剤に含まれている成分で消毒しているからなんです。カット野菜も切り口が綺麗なのはそういった処理をしているからです。
シャウエッセンは大好きでどうしてもたまに食べたくなりますが、亜硝酸塩、いわゆる発色剤と言われるものを加工肉は使っています。ハンバーグを作って加熱したら断面は灰色になりますが、ソーセージやハムはきれいなピンク色です。買う人がそれを望むからいらない添加物を入れるというのが現実です。米だって黒い米がちょっと混ざっているから嫌だとなるから農薬を使って害虫対策せざるを得ないのです。
全部排除する気は無いし、好きな加工食品山ほどありますが、知って食べるのと知らないで食べるのは全然違うと思います。今では原材料を見て買うようになりました。同じ食品でもメーカーによってタール色素使ってたりしますので、少しでも誠実な会社に投票(購入)したいと思っています。買い物は投票ですよ!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年10月11日
読了日 : 2019年10月11日
本棚登録日 : 2019年10月11日

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