魂の森を行け: 3000万本の木を植えた男 (新潮文庫 い 51-2)

著者 :
  • 新潮社 (2006年10月1日発売)
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感想 : 11
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宮脇昭というおじいさん。youtubeでインタビュー等が諸々聞けますがとにかくパワフルパワフル。自分の言いたいことが口から奔流のように流れ出て制御不可能で、インタビュアーも並の力量では頭に納める事は難しいでしょう。とにかく植物と自然への愛が溢れていることは充分に伝わってきます。

この本は宮脇先生の著書ではなく、宮脇先生の歩みを黎明期から辿った伝記のような本です(まだご存命で精力的に活動されているようです)
宮脇先生は家族を顧みずひたすら研究研究また研究。日本全体の植生を網羅し、植生地図で日本列島を覆うという偉業を牽引したお話だけでも充分お腹いっぱい。自分がこれに参加したら間違いなく脱落すると太鼓判を押すくらい過酷なもので、電車で目的の地域についたら紐で四角く囲い、その中に有る植物を一本たりとも落とす事無く確認してその地域の植生や密度、分布などを詳細に確認して行く事を、日本全国で行っていたそうです。しかも戦後の混乱期からずっと。

そしてある時から先生はふと思うわけですね、日本の山から本来の木で出来た山がほぼ消えて、全体の森林の0.06%しか存在しないという事に。水害や土砂災害。空気汚染などを防ぐには古来のその土地に根付く植物を研究して解明し、正しい木を植えて行く事が重要であると提唱します。
何しろ元から自生していたものを再度解明するので、土を掘り土壌の成分などを確認して予測する為莫大な時間が掛かります。ところが先生考えた。その土地土地には、古来から変わっていないと思われる場所が有るではないか。神社や寺の回りに大事に守られている「鎮守の森」これが本来のその土地の持っている植生ではないかと考えるようになります。
先生はその土地土地に合った緑の処方を行い植樹を進めて行きます。先生の処方は最初の3年くらいはメンテナンスが必要ですが、それ以降はメンテナンスフリー!なんて素晴らしい!定期的にお金が落ちない事を嘆く業者からは嫌われますが、先生地球規模で考えているのでそんなこと歯牙にもかけません。
そうして先生は日本国内だけでは無く、万里の長城の緑化にも乗り出しこれを成功させます。そして先生の提唱する「鎮守の森」という言葉はこのまま日本語のままで世界の公用語のなるのでありました。

木に興味無い方ですが、最近ウォーキングで木を見ると気になって仕方が有りません。我が町の森は典型的な植林樹の森ばかりなので、地滑りとか大丈夫かなあなんて密かに思っております。

ちなみにこの本では3000万本ですが、現在は4000万本オーバーとの事です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年9月21日
読了日 : 2015年8月29日
本棚登録日 : 2015年9月17日

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