アー・ユー・テディ? (PHP文芸文庫)

著者 :
  • PHP研究所 (2010年10月12日発売)
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感想 : 74
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これをカバーを掛けずに読む度胸が出ない僕は小さき人間です。でもなかなか面白かった。

和子はちょっとレトロな名前の24才。かわいい雑貨やカフェに目が無くて、バイトする傍らいつか自分が集めた雑貨を並べたカフェを開店する事を夢見ている。得意技はアヒル口。
実家で家族四人で暮らしている。ろくすっぽしゃべらずおならで返事をする父、エコに影響受けているが周囲から見ると無駄ばかりの母、ヘビメタに傾倒しているが職場のホームセンタではおばちゃんのアイドルの兄。おしゃれさの欠片も無い家族にため息の毎日だが本人はすっかりすねかじり。

ある日フリーマケットで熊の編みぐるみに出会う、ミルクティーのような色合いのくまちゃんに釘づけになる「うちの子になる?」手作り感満載のくまちゃんだが何故だか呼ばれたような気がして家に連れて帰った。

家に連れて帰り、ミルクティー色なので名前はミル太にしよっと!などど思っていたら、何故かミル太がしゃべりだした。しかも野太いだみ声で。どう聞いても可愛くない。驚いて話を聞いてみると、事件を追っている時に崖から落ち殉職したベテラン刑事「康雄」であった。
康雄は自分が死ぬ切欠となった事件について語りだした。
ある夫婦がキャンプ場で子供を残して亡くなっていた。
警察は現場の状況から事件性は無いと判断し、子供を残した心中であろうと決着させた。
康雄はこれを殺人ではないかと疑い捜査を続けていた。そんなとき現場で子供持ち物であったクマの編みぐるみが崖に引っ掛かっていた為、取ろうとした瞬間誰かに突き落とされ命を落とした。その瞬間にこのクマに魂が乗り移ったという。
康雄は何とか和子を通じて捜査を続行しようとするが難色を示す和子(そりゃそうだ)。しかし、なだめすかし捜査を続けるうち、和子の中にも刑事魂が目覚めていくのであった。

乗り移り話としては高橋克彦の「ドールズ」が思い出されますが、これはくまちゃんのプリティーな人形に髪薄く脂ぎった59才の刑事が乗り移っています。非常にコメディータッチで悲壮感は皆無でした。
結構小ばかにして(酷い表現だな自分で買ったのに)読み始めたのですが、話の筋自体はとてもしっかりしていて、殺人の動機や周囲の人物もきちんと書きながら、やりとりはとても軽妙ですっかり楽しんでしまいました。
続編も有るようなので見つけたら読んでみるとします。

ところで何かに生まれ変わるとしたら希望は以下の通りです。
鳥⇒カラス(天敵が少なそう。順応性が高そう)
動物⇒猫(なんか楽しそう)
人間⇒室伏浩二(これぐらい凄ければ人生楽しそう)
虫⇒とんぼ(速い)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年9月21日
読了日 : 2015年6月24日
本棚登録日 : 2015年9月17日

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