マンガ人類学講義 ボルネオの森の民には、なぜ感謝も反省も所有もないのか

著者 :
  • 日本実業出版社 (2020年10月15日発売)
3.81
  • (6)
  • (14)
  • (10)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 267
感想 : 18
4

立教大学異文化コミュニケーション学部教授で、人類学者の奥田克巳と、漫画家のMOSAによる、文化人類学をテーマとした漫画と解説。インドネシア・マレーシア・ブルネイにまたがるボルネオ島に住む、プナンという民族の生活を漫画で描いていて、そこにある自然や動物の様子やその人たちの姿などを親しみを持って読むことができる。いろんな描写を通して、プナンの生活において、動物やモノの中にも自分たちと同じ人間性を共通して見いだす考え方や、人に物をあげることを良しとするがゆえに平等な社会ができあがっていることなど、今日本などの社会の一般的通念が絶対ではないのだと思わされる示唆をしている。

プナンの生活それ自体も面白かったのだが、その生活や考え方の違いがどうして起きたのだろうか、という考察を奥田さんがしているところも面白いと思った。分け与える者が偉い社会なので、あげても「ありがとう」がないし、貸しても壊して返ってくるが、それが故に、貧富の差が小さく、本当に人望のある有能な人がリーダーとなり、また有能で無くなればリーダーではなくなる。こういう社会の考え方がどうして起こったのか、について、例えば農耕社会と狩猟採集社会が分かれたことに起因するかもしれないなど分析している。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年4月28日
読了日 : 2022年4月28日
本棚登録日 : 2022年4月28日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする