イノセント・デイズ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2017年3月1日発売)
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本棚登録 : 11059
感想 : 1050
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誰が悪いのか、どうすればよかったのか、ただただ救いの手を伸ばしたくなる痛切なイヤミス。鬼面白い!★5

元恋人の家族ごと放火、殺害した罪によって死刑判決を受けた女性の物語。主人公の関係者たちによる目線で、痛々しい過去のストーリーが進んでいきます。その後の判決後の展開では、錯乱と焦燥にかられた主人公が描かれ、心情が胸に迫ります。

主人公の女性は、私が一番応援したくなる種類の人間です。
自身に厳しく、責任感が強く、目標を定めたら一直線な女性で純粋さが強み。例えば女優、政治家など、実現するのが難しい夢を持っている人であれば、猛烈な輝きを放つ女性になれるでしょう。
ただ、やたら業が深く、もっとも恋人にはしたくないタイプかもしれない。

殺害された元彼氏は、私が一番嫌いな種類の人間です。
優しさと憎しみを繰り返して心の中に入り込む、平気で人の弱みに付け込む。でも本人には悪気はなく、瞬間瞬間ではひた向きに生きている。
こういった人が女性にもてることは知っています、でもなりたくありません。

この小説の魅力は、こういったキャラクターはみんな魅力的で生き生きとしているところで、感情移入が半端ないです。もうサイコー
もちろん世界観やストーリーも素晴らしく、ぐいぐい引き込まれ、圧倒的に丸ごと一冊読めてしまいます。ラストでは自分が助けてあげなきゃ…と思わず涙が流れました。

世間では社会的弱者による悲しい事件が繰り返されますが、背景には少なからず本作のような現実があるのでしょうね。彼ら、彼女らに自分は何ができるのでしょうか。ほんの少しだけ笑顔にすることすら難しそうです。

とにもかくにも超名作です、未読の方は今すぐ読みましょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2022年1月16日
読了日 : 2022年1月16日
本棚登録日 : 2022年1月16日

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