【2023年・第21回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作】名探偵のままでいて (『このミス』大賞シリーズ)

  • 宝島社 (2023年1月7日発売)
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認知症の老人と孫娘、互いを慈しみ合う描写が素敵! このミス大賞2023受賞作 #名探偵のままでいて

■あらすじ
かつて人気の校長先生だった認知症の老人と現役教師である孫娘が、様々な日常の謎に挑む本格ミステリー。2023年このミス大賞受賞作。

■きっと読みたくなるレビュー
優しさが溢れている… まずこの作品から伝わってくる感情は、人の優しさや温かみ。

孫娘とお爺さんのお互いに想い合う情念がいいですね。将来こんなお孫さんができたら、きっと優しい老後を過ごせるんでしょう。

新人賞とのことでしたが、プロットも文章もキャラクターもしっかりしており、まったく問題なし。とくに文章は無駄を上手に省いて、ライトで読みやすく、理解もしやすい。人の思いやセリフも伝わりやすい表現で、しかもロジカルに説明する部分も分かりやすい。素晴らしい!

また作者のミステリー好きがありありとわかる、随所に散りばめられた名作のピックアップが面白いんですよ。

肝心のミステリー部分ですが、比較的シンプルながらも実は多重解決で面白さをグッと引き出している。終盤の畳みかけや真相も間違いない進行具合で、もうバッチシですね。いやーすごい。これからの作品にもぜひ期待したいです。

そして本作の一番の魅力は、やっぱりキャラクターなんですが、特にお爺さんが素敵なんすよ。
これはドラマ化したら超難しい役どころだと思うんですが、見てみたいですね~ 認知症を患っているにもかかわらず、めっちゃカッコいいんすよ。ご存命だったら田村正和さんにお願いしたかったな。

■推しポイント
先日所用で86歳の叔父に会ってきたんです。
まだまだ自宅で仕事をやっていて、しかも毎晩お酒を呑むし、一日に二箱を吸うヘビースモーカー。町内の祭りでは現場を仕切って、たまの休みには競輪場で散財してくる。お孫さんが近所の大学に通うために一緒に住んでいて、いつも喧嘩ばかりしてる。

まぁ元気いっぱいのクソジジイでびっくりしました。

でも突然訪れた私と楽しそうに笑ってお話してくれましたし、いつもの優しい叔父さんでした。子どもの頃には、たくさん遊んでもらったにもかかわらず、大人になるにつれて縁遠くなってしまうんですよね。

人生を彩るには、どんなに年齢を重ねても、人と人との繋がりですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本格ミステリー
感想投稿日 : 2023年2月18日
読了日 : 2023年2月18日
本棚登録日 : 2023年2月18日

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