煌びやかな音楽を奏でる芸術家たちの厳しい現実と卑しさ… チェロに向き合う天才と凡才の物語 #四重奏
■あらすじ
主人公である若き青年はチェリスト、実力はあったがオーケストラの正会員ではなく生活ができていなかった。ある日彼は、チェロを自由奔放に演奏する女性に出会い、すっかり魅了されてしまう。しかし彼女は、本人のスタイルとは合わない楽団に入団し、その後彼を離れていってしまったのだ。数年後、彼女は自宅の火事で亡くなってしまい…
■きっと読みたくなるレビュー
芸術で食べていくのは、ほんと難しいですよね。アウトプットされるものは華やかなのに、何故生み出している人間はこれほどに薄暗い生活をしなければいけないのか。音楽家たちの厳しい現実と醜態さがひしひしと伝わってきました。
生きる道を思い悩むチェリストの目線で物語が進んでいく。自分を信じてきた道を進んでよいか分からなくなる。周りがやたら優れて見え、いつも卑屈な態度になってしまう。毎日が不安で不安で、ずっと予備校生みたいな状態。私も若い時分はうまくいかないことが多かったので、わかるなぁ~彼の気持ち。
凡才には凡才の、天才には天才の、鬼才には鬼才の価値観と判断基準がある。本作は様々な立場で音楽を刻んでいきますが、彼らの中にあるパワーと葛藤と苦しみがリアルに伝わってくるのです。
また本作の謎解きも、物語の芯を食っていて胸に刺さりました。人生は自分が望んだとおりにはならず、結果、美しくはならないもんですよね…
■きっと共感できる書評
私は読書が大好きで、自身への記録の為にレビューを書き始めました。せっかく書くなら、たくさんの人の目に触れてほしいし、その人にとって役に立つものにできればと思っています。レビューを読む人はもちろん、作家先生や出版社の皆さんに敬意をはらうことを忘れないよう、自分なりに魅力や強みを書いているつもりです。
しかしこれが思った以上に難しい。書いてある事実をシンプルにまとめるだけであれば比較的簡単なんですが、作品から伝わるものを自分に取り込んで解釈していくのが難しい。そして作品が読みたくなるように魅力に伝えるには、さらに難易度があがります。国語のテストではないので正解は存在しませんし、読む人によって作品の好き嫌いもある。
正直、書いてても報われることは少なく、経済的なメリットがあるわけではない。作品によってはレビューを書くのに手間と時間がかかってしまうこともある。そんな想いで書いているレビューも、読んでいる人には伝わらないかもしれない。それでも書き続けるのは、やっぱり本が好きだからだと思う。
別に人と感想や評価が違っててもいいし、作家先生の伝えたいことや狙いとずれていてもかまわない。これからも自分なりに、作品たちに向き合っていきたいです。
長くなりましたが、そんなことを考えさせられた作品でした。
- 感想投稿日 : 2024年2月17日
- 読了日 : 2024年2月17日
- 本棚登録日 : 2024年2月17日
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