四重奏

著者 :
  • 光文社 (2023年12月20日発売)
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本棚登録 : 219
感想 : 32
4

煌びやかな音楽を奏でる芸術家たちの厳しい現実と卑しさ… チェロに向き合う天才と凡才の物語 #四重奏

■あらすじ
主人公である若き青年はチェリスト、実力はあったがオーケストラの正会員ではなく生活ができていなかった。ある日彼は、チェロを自由奔放に演奏する女性に出会い、すっかり魅了されてしまう。しかし彼女は、本人のスタイルとは合わない楽団に入団し、その後彼を離れていってしまったのだ。数年後、彼女は自宅の火事で亡くなってしまい…

■きっと読みたくなるレビュー
芸術で食べていくのは、ほんと難しいですよね。アウトプットされるものは華やかなのに、何故生み出している人間はこれほどに薄暗い生活をしなければいけないのか。音楽家たちの厳しい現実と醜態さがひしひしと伝わってきました。

生きる道を思い悩むチェリストの目線で物語が進んでいく。自分を信じてきた道を進んでよいか分からなくなる。周りがやたら優れて見え、いつも卑屈な態度になってしまう。毎日が不安で不安で、ずっと予備校生みたいな状態。私も若い時分はうまくいかないことが多かったので、わかるなぁ~彼の気持ち。

凡才には凡才の、天才には天才の、鬼才には鬼才の価値観と判断基準がある。本作は様々な立場で音楽を刻んでいきますが、彼らの中にあるパワーと葛藤と苦しみがリアルに伝わってくるのです。

また本作の謎解きも、物語の芯を食っていて胸に刺さりました。人生は自分が望んだとおりにはならず、結果、美しくはならないもんですよね…

■きっと共感できる書評
私は読書が大好きで、自身への記録の為にレビューを書き始めました。せっかく書くなら、たくさんの人の目に触れてほしいし、その人にとって役に立つものにできればと思っています。レビューを読む人はもちろん、作家先生や出版社の皆さんに敬意をはらうことを忘れないよう、自分なりに魅力や強みを書いているつもりです。

しかしこれが思った以上に難しい。書いてある事実をシンプルにまとめるだけであれば比較的簡単なんですが、作品から伝わるものを自分に取り込んで解釈していくのが難しい。そして作品が読みたくなるように魅力に伝えるには、さらに難易度があがります。国語のテストではないので正解は存在しませんし、読む人によって作品の好き嫌いもある。

正直、書いてても報われることは少なく、経済的なメリットがあるわけではない。作品によってはレビューを書くのに手間と時間がかかってしまうこともある。そんな想いで書いているレビューも、読んでいる人には伝わらないかもしれない。それでも書き続けるのは、やっぱり本が好きだからだと思う。

別に人と感想や評価が違っててもいいし、作家先生の伝えたいことや狙いとずれていてもかまわない。これからも自分なりに、作品たちに向き合っていきたいです。

長くなりましたが、そんなことを考えさせられた作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2024年2月17日
読了日 : 2024年2月17日
本棚登録日 : 2024年2月17日

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コメント 8件

bmakiさんのコメント
2024/02/18

autumn522akiさんのきっと読みたくなるレビューを読んで本を購入したのは一回や二回ではありません(*^▽^*)
私のようにautumn522akiさんのレビューから、気になって読んだ方も沢山いらっしゃるかと思います。

そんな時に誰のレビューを読んでこの本を買ったのかボタンでもあれば、レビューしてくださった方の評価にもなりそうですけどね(*^^*)

autumn522akiさんの感想は読みやすく纏っているので、これからも私の好みそうな作品はじっくり読ませて頂きたいと思っておりますm(_ _)m
いつも上手なレビューに感心しております。

autumn522akiさんのコメント
2024/02/18

bmakiさん、優しいコメントをありがとう。マジ泣いた。
本書を読んでいたら、人に伝えるということの意味や意義を考えさせられてしまって、つい語ってしまいました^^

これからも、読むことも書くことも楽しんでいこうと思います!

土瓶さんのコメント
2024/02/18

いつもレビューでお世話になっとります。
参考にさせてもらってますよ^^
俺のレビューや評価なんか、もう、人と違いまくりですよ!
( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \

autumn522akiさんのコメント
2024/02/18

土瓶さん、コメントありがとうございます!
やっぱ、それでいいですよね。ぐははははははははは

yyさんのコメント
2024/02/20

私も aki さんのレビューを参考にさせてもらっていますよ~。
直近では「Q」。
手にした時はあまりのぶ厚さに、ぶっ飛びそうになったけど、
読んでよかったぁ!
学問の世界では、引用された数で論文の評価がされるとか。
bmakiさんのコメントにある ボタン、あればいのに。
これからも aki さんのレビュー、楽しみにしてまぁす♪♪

autumn522akiさんのコメント
2024/02/20

yyさん、めっちゃ嬉しいお言葉
読んでよかったなんて最高のお褒めの言葉です、ありがとう~

>学問の世界では、引用された数で論文の評価がされるとか。
なるほど!確かにですね!

皆さんのおかげで元気になってしまいました♪

kuma0504さんのコメント
2024/02/21

秋さん、
ご自身の書評の破壊力を過小評価してはなりません。
秋さんの書評で読んだ本は、私の場合はマイベストレビューで記録しているから確かなのですが、少なくとも「メインテーマは殺人」「爆弾」「十戒」と3冊もあります。実はもう一冊「未明の砦」もレビュー読んですぐに図書館に予約したのですが、半年経っても未だ借りれてないだけです。3冊って、少ない?そんなことはない。マイルールでは、私は流行小説は本屋大賞か、私のファンの作家しかできるだけ手を出さないようにしようと決めているのですが、秋さんのそれは、それを破るだけの破壊力があるんですよ。

autumn522akiさんのコメント
2024/02/21

ありがとうございます、ちょっと涙がでてしまいました。
くまさんにも優しいお言葉をいただいて、書くことの価値や責任を感じ、いい意味で緊張感がでました。こんなにも嬉しいことはないです。

自分の向き合ってることに疑問を持ち始めるという、本作の主人公と似たようなことになってしまいました。私にとってめっちゃ大切なレビューです。

みなさん、ありがとう。

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