逆転正義

著者 :
  • 幻冬舎 (2023年8月23日発売)
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逆転劇に驚嘆! 様々な犯罪をテーマに現代の社会問題を浮き彫りにするミステリー短編集 #逆転正義

いじめ、売春、覚せい剤など様々な犯罪をテーマに、正義とは何たるかを切り取ったミステリー短編集です。現代の社会風刺も皮肉たっぷりに描かれていて、読んでるとムラムラと腹が立ってくる。でもタイトルどおり逆転をしてくれるので、最後には爽快感を味合わせてくれる内容になってます。

短編でプロットも工夫が多い作品ながらも、さすがは下村先生ですよ。細部まで丁寧に表現された筆致で読み物としても楽しく読めまる良い作品でした。

〇見て見ぬふり
学生のいじめ、それを見て見ぬふりをする教師の物語。
まさに今、世間を騒がせているような問題。何をやってもいいけど、やりすぎるとどうなるか。一度きりの人生だから後悔のないような行動をしたいものです。

〇保護
雨が降る深夜のコンビニ、寒さに震える女性と保護する男性の物語。
独身男性なら一度は想像してしまうシチュエーションで悶々としちゃう。シンプルながらもいい逆転劇で楽しい作品でした。ちなみに、知り合いがこのパターンで大変な目に合った。

〇完黙
違法な薬を販売している男の物語。
主人公の気持ちを推し量ると胸が痛くなってくるお話でした…

〇ストーカー
血みどろの手を洗っている時に彼氏が訪問してくる…はやく帰ってよ!
登場人物全員が自分勝手という、人間不信に陥ること請け合いな作品。こわいよっ

〇罪の相続
気が付くと拘束されてた男、理由を聞くと祖父からの恨みを買っているようで…
思った以上の逆転劇で、さすがにこれは発想に至りませんでした。

〇死は朝、羽ばたく【オススメ】
刑務所から出てきた男に、若者たちが正義を盾に脅迫していく。
実は重いテーマ性で、しかも展開も面白いイチオシの作品。「正義なんて考えたことないくせに」本書全部を包み込むような名言が切れ味鋭くて好き。

■きっと共感できる書評(今回は世間への説教)
Aは正しい、Bは間違ってる。Xは得をして、Yは損をする。何でもかんでも〇×をはっきり決めようとする。世知辛い世の中とはよく言いますが、あまりにも心が狭すぎる。

価値観を人に押し付けすぎる。人それぞれ十人十色、それが人間社会の魅力。世界に出れば、人種、宗教、言語、経済、生活習慣など様々な違いがあるから、それぞれの価値観や正義が生み出される。地球にいる70億人が、ひとつの考え方になるわけがないんです。

正義を振りかざしたりせず、ちゃんと話し合い、互いに理解や尊重や妥協をすることができれば、人を傷つけるようなことをしないですむと思うのですが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2023年11月20日
読了日 : 2023年11月20日
本棚登録日 : 2023年11月20日

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