プロタゴラス: あるソフィストとの対話 (光文社古典新訳文庫 Bフ 2-1)

  • 光文社 (2010年12月9日発売)
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・人間というものは、お互いに相手がいろいろな欠点を持つと考えているものだ。だが、欠点が生まれつきや偶然に由来する場合には、そうした欠点を持つ人たちに腹をたてたり、忠告したり、あるいは教育したり、罰を与えたりして、その欠点を矯正しようとする人は誰もいない。むしろ、たんに彼らを憐れむだけだ。たとえば醜い人や、小さな人や、虚弱な人に対して、いま言ったようなことをしようとする愚か者がどこにいよう? わたしが思うに、人々は、人間がこのような美点や欠点を持つのは、生まれつきや偶然によるのだとわかっているのだ。

・たとえば、自分の母親や父親や祖国、あるいは何かそれに類するものと反りが合わなくなることが、人間にはしばしば起こります。悪い人たちであれば、何かそのようなことが起こると、まるで親や祖国の欠点を見るのが楽しいことであるかのように、文句を言いながら欠点をあげつらい、とがめだてます。彼らは親や祖国をないがしろにしているものだから、そのことで世間の人たちの非難や叱責にさらされないようにと、そんなことをするのです。そして、その結果、彼らはよりいっそう親や祖国に文句を言うようになり、もとの避けがたい憎しみに、自分から生み出した憎しみを積み重ねていくことになります。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年1月16日
読了日 : 2022年1月16日
本棚登録日 : 2022年1月16日

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