祈りのカルテ 再会のセラピー

著者 :
  • KADOKAWA (2022年8月10日発売)
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『祈りのカルテ』の続編。

循環器内科医となった諏訪野良太は、学会帰りに医学生時代の同級生、小鳥遊さんと彼が連れていた研修医・鴻ノ池さんに遭遇します。
本書は、彼らに研修医時代のエピソードを語るという体で綴られる、連作三話(プロローグ&エピローグ)と幕間の構成となっております。

〈救命救急部〉に搬送され、自らインシュリンをインスリンを打ってまで入院を希望する元ヤ〇ザの男性の狙いとは・・。(「救急夜噺」)
〈美容外科外来〉に来た、無茶な整形手術を繰り返す崖っぷち女優の真意とは?(「割れた鏡」)
〈緩和ケア科〉で、諏訪野が担当することになった末期患者の抱える秘密とは・・。(「二十五年目の再会」)

各話、患者の不可解な行動や抱える秘密を、諏訪野先生が持ち前の観察眼で謎を解いていく展開で、謎解きとしては勿論、医療・人間ドラマとしても秀逸な作品となっております。
特に、三話目「二十五年目の再会」は、諏訪野先生が担当することになった患者の広瀬さん(彼の存在は、一話目から伏線のように登場していたのもミソ)の、過去の冤罪について真相を追う流れで、“ちゃんとミステリ”を楽しめるのに加えて、ラストで驚きの感動サプライズが待っているという、まさにサブタイトル“再会のセラピー”にふさわしい素敵な物語でございました。
〈緩和ケア科〉の指導医・窪先生の仰っていた、「医学とは“永く、そして、より良い生涯を送れるようにする”ための学問」という台詞は、けだし名言だと思います。

因みに“幕間”では、飲み屋で諏訪野先生の話を聞く小鳥遊さんと鴻ノ池さんの様子が描かれているのですが、こちらの二人は知念さんの別シリーズ“天久鷹央シリーズ”の登場人物なのですね。
鴻ノ池さん曰く、鷹央先生は“医療版シャーロック・ホームズ”との事で、彼女らが所属する〈統括診断部〉では、幽霊や人体発火現象・陰陽師の呪い等々・・医療現場とは思えないスリリングな事件が起こっているようなので、こちらのシリーズも読みたくなってしまった私なのでした~。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2024年読了分
感想投稿日 : 2024年1月18日
読了日 : 2024年1月18日
本棚登録日 : 2024年1月18日

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