岸辺の旅 (文春文庫 ゆ 7-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年8月3日発売)
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本棚登録 : 973
感想 : 142
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静かでじんわりとした余韻が残る作品。
三年前に失踪した、瑞希の夫・優介が、ふいに現れます。
ですが、優介いわく“俺の体は海の底で蟹に喰われてしまった”と。つまり、既に死んでいるというのです。
そんな優介に導かれ、彼の三年間の足どりを遡るように二人は旅に出ます。
旅の間、失踪中の不在だった期間を埋めるようによりそう、二人の何気ないやり取りに、かけがえのない人と過ごす時間の尊さというものが伝わってきます。
もしかしたら、個人的に最近身内を亡くした事もあり、そうした事情で、“死者との繋がり”というものが殊更心に染みてくるのかもしれません。
全体的に“水の気配”が濃厚に漂う、朧げな雰囲気は、常世と現世の狭間を感じさせるものがあります。
この作品は、深津絵理さんと浅野忠信さん主演で映画化されているので、そちらも観てみたいと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2021年読了分
感想投稿日 : 2021年6月10日
読了日 : 2021年6月10日
本棚登録日 : 2021年6月10日

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