あるキング (徳間文庫 い 63-1)

著者 :
  • 徳間書店 (2012年8月3日発売)
3.08
  • (130)
  • (504)
  • (925)
  • (395)
  • (104)
本棚登録 : 6942
感想 : 651
3

文庫版の裏表紙に記載された、“この作品は、いままでの伊坂幸太郎作品とは違います”との文言が気になる本書。
とある天才バッターの数奇な運命が描かれております。

“常敗球団”・「仙醍キングス」の熱烈なファンである両親の元に生まれた、山田王求(おうく)。
類い稀な才能を持つ王求に、両親は情熱を注ぎこみますが・・。

“出る杭は打たれる”と言いますが、王求の場合は突出しすぎて、周りがドン引きしているような状況です。
故に、孤立しがちではあるのですが、王求自身はすべてを野球に“全振り”しているので、常に淡々としてブレずに自分軸を貫いている様が、ある意味凄みを感じますね。
このように、とんでもない才能を持った彼であるのに、王求の運命は何とも皮肉な方へ展開していきます。
その話の進め方が巧みで、読みやすさもあり、サクサク進みます。ラストは切なかったですが、独特の余韻が残るものでした。
因みに、『マクベス』の〈フェアはファウル。ファウルはフェア(良いは悪い。悪いは良い)〉という台詞が全体的なキーワードとなっているのですが、この物語は悲劇でもあり、喜劇でもあるのかな、と思った次第です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2022年読了分
感想投稿日 : 2022年12月10日
読了日 : 2022年12月10日
本棚登録日 : 2022年12月10日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする