ちっぽけな夫婦の、大きな愛の物語。夫婦って、不思議だ。恋人の延長ではなくなっていく。何ていえばいいんだろう。あるべき場所におさまる感じ?今まで起こってきた嫌なこと辛いこと、恥ずかしいこと、すべてすべてが、その人と出会うためにあった。そんな感じ?
妻の名前は妻利愛子(つまり あいこ)。見えないものが見えたり、聞こえないものが聞こえたりする性質。霊感?西さんの作品って、こういう女の人が多いのかな。
夫の名前は、無辜歩(むこ あゆむ)。小説家。過去に年上の既婚女性と不倫をし、その別れの後、自分の背中に飛ばない鳥を刻む。無辜さんの設定は、村上春樹さんのかく男とかぶる。1Q84の、天悟くんかと思った。
ツマ、ムコさんと呼び合う仲のよい二人の日常が淡々と書き連ねられていくだけかと思ったら、ムコさんの元に届いた手紙をきっかけに、二人の仲に微妙なずれが生じていく。この辺、読んでて痛かった。
物語は、ムコさんとツマ両方の視点で交互に書かれるから、読み手である私は二人がどれほどお互いがお互いを好きかわかる。だからこそ、二人が微妙にすれ違っていくのが辛かった。
「おかえり」「ただいま」。あるべき場所に帰ったムコさん。自然に受け入れるツマ。二人がきらきらしていて、ぴったりで、とてもうらやましかった。
こんなにはっきりと、誰かを好きだと認識していられて、相手からも同じように好きを返してもらえるなんて、奇蹟のようだと思った。
すきって、いいな。誰かを好きでいて、その誰かからも好きでいてもらえて、その人のそばにいられて、おかえりただいまが言えるって、いいな。
それは、この世界の中の、いっとうの幸せなんだろうって、思った。
- 感想投稿日 : 2013年5月28日
- 読了日 : 2013年5月13日
- 本棚登録日 : 2013年5月28日
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