ワールドトリガー 12 (ジャンプコミックス)

著者 :
  • 集英社 (2015年9月4日発売)
4.35
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本棚登録 : 1582
感想 : 27
5

12巻は、戦術やキャラクターの内面描写中心。いわゆるバトル漫画の王道であると同時に、修が自分の戦力的限界をひしひし感じ始める転換期。これまで戦略的な工夫で何とかしのいできたけれど、勝ち進むにつれて今までと同じやり方では通用しなくなっていく。遠征が前倒しになる可能性で焦っている修には、菊地原の歯に衣着せぬストレートな指摘が追い打ちになる。言い方はきついけど、菊地原なりに「みんなと同じことをしても追いつけない」というアドバイスをしていると思うけど、焦り一辺倒の修はそれどころじゃない感じ。

ランク戦の中では熊ちゃんと村上くん、遊真の三つ巴対戦が熱かった。女の子はトリオン体でも男の子よりも体力面で劣るのか…熊ちゃんが孤月両手持ちなのがそういう理由なら、両手自由に使える村上くんに対して圧倒的に不利。片手落ちてやむなくという感じでメテオラを使い出したけれど、射撃トリガーもあった方が局面変えられて戦いやすそう。今後オールラウンダーよりの熊ちゃんが見られたら面白いな。

三つ巴の最中、遊真が茜ちゃんを見つけたときの静かな迫力にぞくぞく。「そこか」の遊真の表情は背筋が凍る。獲物を狩る冷徹な目。コマがひっくり返っていても目の温度でわかる。実戦経験の積み重ねが目の色を深めていったんだなあ。あんな目をするのは、死線をくぐり抜けてきた遊真だけだ。遊真対村上くんの戦いは、眠らない遊真対眠る村上くんの対比でもある。今回は勝ち筋を限定して、勝負するポイントを決めて決着をつけたから勝ったけど、純粋な強さは村上くんの方が上。直接対決した中で、はっきり遊真より強い人が描かれたのは彼が初めてかな。

解説は東さんのときと違ってグダグダだったけど、太刀川さんの「気持ちの強さは関係ないでしょ」は、ワールドトリガーならではの名言だと思う。主人公サイドや特定キャラクターにどれだけ重いものがあったとしても、それと同じように他の人も努力をしていることを蔑ろにしてはいけない。ストーリーもなんとなく嘘臭くなるし…。それに、優しい言葉だと思う。気持ちの強さ弱さで勝負を語ることは、負けた側にとってはただ悔しさを煽られるだけでしかない。やる気が足りなかったから負けたと言っているようなもので、負けたときにこれを言われるとすごく辛い。あくまで気持ちは気持ち、強くなる原動力にはなっても強さそのものにはならない。精神論にありがちな言葉の罠を、さりげなく否定する太刀川さんがカッコいい。

B級ランク戦を見ていると、レイガストって人気がないと言われる割には結構便利な気がする。オプションが整っていて攻撃や移動、防御に幅広く使える。となると、重さを厭わしく感じるスピード重視の攻撃タイプが多いのかな。村上くんもあれだけレイガストを使っているのを見ると、修と同じで奇襲戦法寄りなのかもしれない。

次巻は修行の回。麟児さんやアフトクラトルの追加情報も出てきて、これからまた話が膨らむ予感。巻末で柚宇さんと出水がスーファミしていらっしゃるし。スーファミとはまた古い機械を。楽しそうに対戦してる様子が、また眼福でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: バトル・アクション系
感想投稿日 : 2015年12月20日
読了日 : 2015年11月8日
本棚登録日 : 2015年11月8日

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