パーマネント神喜劇

著者 :
  • 新潮社 (2017年6月22日発売)
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本棚登録 : 1315
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縁結びをつかさどる神とその様子を報告書にまとめる調査員の神。彼らの計らいによりご縁が成就した人間のカップルを描いた連作短編集。

『はじめの一歩』は、「まずはじめに」が口癖の肇と彼女であるみさきが主人公だ。先の見通しがないと前に進めない肇だが、神様は二人の縁を結ぶことができるのか。

『当たり屋』は、何をやっても中途半端に終わってしまい、当り屋で小銭を稼いで暮らす英二が主人公。同棲していた彼女にも愛想をつかされ、やけになって競馬で「当ててやる」と叫び有り金をつぎ込んだ馬券が見事的中。これは神社を異動する神様の後任としてきた女神の采配だった。

『トシ&シュン』は、小説家、俳優を目指しお互いに切磋琢磨する男女の物語。二人とも次のチャンスがだめならあきらめて就職しようと考えている。芸能&縁結びのハイブリッドな願いを神様は無事成就させることができるのか。

最後の『パーマネント神喜劇』は、阪神大震災を彷彿とさせる大地震に見舞われて音信不通となってしまった神様と、神様を助けようと奔走する調査員の神様の間に起こった奇跡。

全編とも、人生が上手くいっていない人たちが前に進んでいくきっかけをつかむ小さなハッピーストーリーで、疲れているときに読むにはちょうどいい物語だ。
何もかもうまくいかない、と思っていても、ちょっとしたきっかけで好転することがある。それは、目には見えない神様が少しだけ力を貸してくれているのかもしれない。
自分一人で悩んでいたことも、神様が見てくれると思うと気が軽くなる。神頼みって必要なのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の現代小説
感想投稿日 : 2021年4月28日
読了日 : 2021年4月28日
本棚登録日 : 2021年4月28日

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