だれもがポオを愛していた (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社 (1997年8月23日発売)
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本棚登録 : 207
感想 : 27

エドガー・アラン・ポオの『アッシャー家の崩壊』を新たな解釈で再構成したミステリ。

日系人実業家、エイブ・アシヤ氏がボルティモアで購入した沼沿いの屋敷が爆破により崩壊した。屋敷には、エイブの弟の子どもであるロバートとメアリアン兄妹が住んでいたが、メアリアンは謎の言葉を残して死に、ロバートの遺体も沼から発見される。さらに、ポオの小説『ペレニス』『黒猫』に見立てた死体が屋敷周辺で次々と見つかったため、警察の捜査は行き詰まってしまう。
アメリカに住む父を訪れた日本人外交官のニッキは、父の友人の息子でボルティモアの警察官であるナゲット・マクドナルドから情報を得て、この不可解な事件の謎に挑む。

翻訳小説風の語り口に登場人物の冗談のような名前で、一見軽めのパロディのように見せかけて、実は極めて論理的に『アッシャー家の崩壊』の新解釈を展開する。この硬軟取り交ぜた感じが本書の大きな魅力である。
翻訳小説風というのもポイントで、舞台が日本なら警察の捜査にリアリティがないと物語が嘘くさくなってしまうところ、アメリカの警察が舞台なので、部外者のニッキがぐいぐい捜査に入っていっても「そういうこともありなのかな」となんとなく納得してしまう。

題名から推察できるとおり、本書はポオが大好きな人向けの小説なので、ポオの小説、特に『アッシャー家の崩壊』を全く読んだことのない人にはさすがにおすすめできないが、代表作を一度さらっと読んだ程度の私くらいの者ならミステリとして十分楽しめる。
読み終えた後は、ポオを改めて読み直したくなること間違いなしである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本のミステリ
感想投稿日 : 2024年3月9日
読了日 : 2024年3月3日
本棚登録日 : 2024年3月9日

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コメント 3件

111108さんのコメント
2024/03/09

b-matatabiさん♪

この前コメントいただいた時本書読み終えたとのことで、レビュー楽しみにしてました!

そうですね〜ふざけた名前やノリから軽めのパロディかと思ったら、かなり本格的なミステリー で読み応えありますね。エピローグも『アッシャー家の崩壊』考察という体で作者の思いを語らせてますし、ポーに惚れ込んで書かれたが伝わってきますね♪

b-matatabiさんのコメント
2024/03/10

111108さん、コメントありがとうございます。
アメリカの警察はニッキを信用し過ぎ、とは思いましたが、それでも違和感なく読めるのは、翻訳小説っぽくしたからかな、と思います。

前に111108さんがおすすめしてくれた、ポアロの『カーテン』を解釈し直した法月綸太郎シリーズの『カーテンコール』を読んだときと同じすっきり感を味わえました。

111108さんのコメント
2024/03/10

b-matatabiさん♪

確かに翻訳小説風なのがニッキの活躍ぶり?をいかしてて良かったですね。
法月さんの『カーテンコール』あれも論理的でありながらポアロ愛に溢れていて、読んで楽しかったですよね!原作のオマージュ作品としてどちらも好きです♪

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