変人と奇想天外な事件ばかりの現代アメリカ小説、わたしはけっこう好き。コスプレ好きのフランク、気の強いフラニー、筋トレ好きのジョン、小人症のリリー、耳の遠いエッグ。十五歳のジョンは、大晦日の夜、自分たちは変人だと気付く。家族以外の人間に自分の家族を紹介する際に「恥ずかしさ」を感じるからだ。また飼い犬ソローは死後、剥製にされる。ソロー(悲しみ)がいる一家には悲しみがつきまとう。ホテルニューハンプシャーの宿泊客はおらず、売ってしまう始末。そんな調子で下巻へ。
p218
フラニーはまた風呂にはいりたいと言った。ぼくはベッドに寝ころがって、バスタブに湯が一杯になっていく音に耳をすませた。それから起き上がって、バスルームのドアのところへ行き、何か要るものがあったら持ってきてあげると言った。
「ありがとう」彼女は低い声で言った。「外へ行って、昨日と、それから今日の大部分を持ってきてちょうだい 」彼女は言った。「それを返してほしいわ」
「それだけかい。昨日と今日だけ?」
「それだけよ」彼女は言った。「恩にきるわ」
「ぼくにできれば、そうするよ、フラニー」ぼくは彼女に言った。
「わかってる」彼女は言った。彼女がゆっくりバスタブに沈むのがわかった。「あたしは大丈夫」彼女は囁いた。「あたしのなかのあたしは誰も取りはしなかった」
「愛してるよ」ぼくは囁いた。
彼女は返事をしなかった、そしてぼくはベッドに戻った。
p251
そしていっかな雨の降る気配はなかった。-ただのひとしずくも。
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- 感想投稿日 : 2020年8月4日
- 読了日 : 2020年8月4日
- 本棚登録日 : 2013年10月11日
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コメント 1件
workmaさんのコメント
2022/11/15