5000日後の世界 すべてがAIと接続された「ミラーワールド」が訪れる(「世界の知性」シリーズ) (PHP新書)

制作 : 大野和基 
  • PHP研究所 (2021年10月15日発売)
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これからの五千日は、いままでの五千日よりもっと大きな変化が起きる。ミラーワールドは静かに動き出している。

著者のケヴィン・ケリーは、雑誌『WIRED』の創刊編集長。テクノロジーによって引き起こされる数多くの変化を予測し、的中させてきた人物が、未来を語る。

例えば今後...
➤五年以内のうちに新車はほとんど電気自動車になる
➤十年以内にiPhoneに相当するような、世界中の人たちが欲しがる中国製の製品が出てくる
➤十年ほどのうちに、AR(拡張現実)の機能がついたスマートグラスが仕事の現場で使われるようになる

といったことを、ケヴィンは予想している。

五千日といえば、約十三年半。生まれたばかりの赤ちゃんが、中学校の生活に慣れ始めるくらいの時間が経つ。

あなたは、五千日後の世界が思い浮かぶだろうか?

ノー?
それならきっとこの本が、その世界を想像する助けになるだろう。


p20
百万人単位の人たちが一つのプロジェクトで同時に働くことが可能になる

同時に百万人が働くためには、現在はまだない新しいツールが必要になります。例えば、AR(拡張現実)の機能がついたスマートグラスです。ARは、仕事を相互に行う場合に、物理的な交流を容易にするテクノロジーです。

p23
ミラーワールドの最も基本的な説明は、「現実世界の上に重なった、その場所に関する情報のレイヤーを通して世界を見る方法」というものです。VR(仮想現実)は外界が見えないゴーグルの中でのバーチャルな世界ですが、ARは、スマートグラスなどを通して現実世界を見ます。すると現実の風景に重なる形で、バーチャルの映像や文字が出現します。

p27
(前略)「ポケモンGO」というゲームは、実際の場所にスマホをかざすと仮想的なキャラクターが画面に出てくるもので、ミラーワールド到来の片鱗を示してくれました。ゲームは常に、テクノロジーが培養される場所です。
なお、コロナ禍によって二十年ほど前にできたビデオ会議システム(Zoomなど)が実用的なものになりました。ビデオ会議システム自体は二十年ほど前からあったテクノロジーでそれほど変化もしていないのですが、それが非常に安価になり、使いやすくなって、誰もが使って慣れてきた。

p38
今後十年ほどのうちに、仕事の現場で使える何らかのスマートグラスが出てくるでしょう。

p39
そして今後約二十五年のうちに、より実用的なスマートグラスができて、一般人も使えるようになると思います。それまでは、家庭ではなく会社での利用や、ゲームでの用途が主となるでしょう。

p44
例えばギットハブ(GitHub:プログラムのコードやデザインのデータを世界中の人が保存・共有できるサービス)などでは多くの人がゆるく共同作業をしており、誰か一人が経営しているとか、上司から直接命令されるような形にはなっていません。

p110
(前略)中国のような国では独自の暗号通貨を作って全員ち使わせるでしょうね(二〇二一年現在、中国では国家発行のデジタル通貨「デジタル人民元」の運用実験を進めており、南米でもブラジルやエルサルバドルでの採用が報じられている)。こうした国家による暗号通貨は、国民全員が実名で使うよう義務付けられるでしょう。こうしたお金しか使えない時代には、すべての取引が透明化される金融環境が実現し、まるで違う世界になるでしょう。
現在のビットコインが使っている、外からはアクセスできないダークウェブ方式である必要はなく、完全に公的な暗号通貨も作れます。誰もが自分の名前を明らかにしなければ買うことができないのです。すべての取引が実名で行なわれ記録されるようになるのでしょう。そうなれば、暗号通貨は犯罪者の不正な使い方をするものと、完璧に監視できるものに分かれると思います。
デジタル化された証券であるセキュリティトークンなどを使い、不動産の共同保有をするなど、ブロックチェーンを用いて何でも商品化しようという動きもあります。

p115
例えば、私はいま、娘のために近所に家を建てていますが、その地域では年中暖房の必要があり、天然ガスを使っています。これをヒートポンプにするつもりです。ヒートポンプは主に冷蔵庫で使われているもので、熱を移動させて双方向で冷やしたり温めたりできて冷暖房に使えるものです。それには燃料を燃やす必要はなく、冷蔵庫で使っているような電気モーターやコイルで熱の移動をするだけです。
現在はあまり普及してはいませんが、非常に効率の良いもので、当分は少々割高かもしれません。しかし燃料を使わないので二酸化炭素は出ません。家では太陽光発電をしているので、ほとんどの電力をそれでまかない、さらにヒートポンプを使うことで、グリーン・エネルギーとしての解決策になっていると思います。

p116
五年以内に新車はほとんど電気自動車になると思います。

p119
アメリカでは、すでに人種差別を軽減するためにARが使われています。ARで外見を変え、あなたが黒人になって私が日本人になるなどと、まったく自分の素性を変えてしまうんです。そういう状態で他人がどう反応するかを体験すると、理屈ではなくてお互いの見方を感じることができます。

p131
(前略)私は十年以内にiPhoneに相当するような、欧米人も含めて世界中の人たちが欲しがる中国製の製品が出てくると予想しています。(中略)例えばある中国企業が、誰もが欲しがる高品質で格安のスマートグラスを開発して、ARやデータを牛耳ることになったら、アップルのような地球規模の企業になるかもしれません。

p138
将来は大きな都市が好まれ、その他の地域は食料生産のための平地で、それ以外は自然のままになるでしょう。非常に効率的な都市に暮らし、郊外の自然の中にある農園ではロボットが働いているというイメージです。

p140
将来は都市がますます成長し、いっそう都市人口が増加するとされています。現在の都市人口の割合は全世界人口の約50%超ですが、これから75%近くになるでしょう。

p182
エルサレムに行ったとき、余命が六カ月しかなかったらどう生きるかという修行をして、その気になっていろいろ考えましたが、それがきっかけで、自分の人生の残り日数を示す時計を使うようになりました。たた、音楽家のブライアン・イーノからも、これからの人生を年単位ではなく日数で考える発想法を教えてもらいました。
例えば、これから二十年は生きると言うと長く感じますが、日数で考えると七千日余りなんです。生命保険などの資料や政府が出している平均余命の表などから、自分が生まれた一九五二年生まれの人の平均寿命の予測を調べると、例えば七十五歳などと出てきます。そこで私はその七十五歳から現在の年齢を引いて、その長さを日に換算して時計を作るのです。そうするとその日数が毎日減っていき、それをコンピューターで表示しておくと、毎日あと何日生きられるかが表示されます。
「あと六千二百八十日」と具体的に書かれていると、その間に何をすべきかを具体的に考えるようになります。「あと六千二百日あるから今日は何をしよう」と発想でき、やるべきことが多いと気づき、何をしたいかを選べるようになります。

p191
一つのやり方としてヒントになるものは、常識とされている、皆が当たり前だと思っていることに疑問を抱く、そしてそれを覆して考えてみるということです。ほとんどの場合、常識と呼ばれているものは正しいのですが、中にはやはり間違っているものも混ざっています。それを発見できれば、新たな洞察になります。ですから、常識に対して疑問を抱くという習慣を持つことが大事です。それが新たなストーリーや仮説を作っていくということにつながります。

p192
もう一つは、エビデンスを探すことです。未来のストーリーを考える際に、あるアイデアが浮かんだとしましょう。その後にすべきことは、具体的な裏付けを探すということです。関連する研究論文や証拠があるかどうかということを探していくわけです。もしあるのなら、さらにほかにも裏付けとなるエビデンスがあるかということを、どんどん探索していく。こうしてそのストーリーと裏付けを取りながら、本当の予測に作り上げていきます。

未来を構想するプロセスの半分はその着想(アイデア)であり、その残りの半分というのはそれを実現していくためのエビデンス、やり方を探すということなのです。

p193
インターネットが一般に 使われ始めて約五千日が経った頃、ソーシャルメディアがよちよち歩きを始めました。そして、現在はソーシャルメディアが歩き始めてから約五千日が経ったところです。
これからの五千日は、いままでの五千日と比べてもっと大きな変化が起こるでしょう。

p194
これから起きるほとんどの変化は精神的なもので、われわれ同士の関係性や余暇の過ごし方、自分というものの捉え方や人生観、他人やいろいろな対象とどう関わるかなどの意味を変えていくでしょう。われわれがどういう存在であるか、どうやって物事を理解するのか、科学を変化させどのように真理を追究するかなどの点での変化なのです。そのため、これらの変化は目には見えません。そういう点での変化が五千日の間に起きるのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 0類 総記
感想投稿日 : 2022年2月16日
読了日 : 2022年2月13日
本棚登録日 : 2022年1月25日

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