19世紀初頭、アメリカ・ボストン南東部にあるマザーズヴィンヤード島は住民の25人に一人が遺伝性難聴による聾者だった。
聴者も手話を使い、聾者だからと差別されることも全くなかった。
これだけ知るとパラダイスのようだが、差別がなかったわけではない。イギリス系住民は、原住民であるワンパノアグ族、黒人、アイルランド人(映画「コミットメンツ』でアイルランド人の若者が「俺たちはヨーロッパの黒人だ」と言ってたのを思い出した)を同じ人間として扱わず、土地の所有をめぐって、そもそも「所有」の概念がないワンパノアグ族と争っている。(もちろん白人に有利な社会構造である。)
主人公と父は友人として付き合うが、母や親友は明らかに下に見ている。
人は差別をせずにはいられない、というか、多分差別をしている人たちも差別しているという意識はなく、単に「私たちとは違う人」と思っているのかもしれない。が、実はそれこそが差別であることには気付いていない。
後半の展開より前半の様々な意識の差を描く部分が興味深かった。
かつて脳性麻痺の人たちが知的能力が低いと思い込まれて差別されていたという物語(『ピーティ』)を読んだが、聾者や盲者は書いたり話したりできるからそんな偏見はないものと思っていたが、そうではなかったのだなと思った。多数派の人は少数派の人に鈍感なのだろう。興味がない、よく知らないというのも差別に結び付くということがわかる物語だった。
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- 感想投稿日 : 2022年9月11日
- 読了日 : 2022年9月11日
- 本棚登録日 : 2022年9月11日
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