幼い頃ハンセン病に感染しながら、貧しさと誤診と戦争で放置され、21歳でハンセン病と診断されたときは、病はかなり進行していた、というのがいたましい。
しかしきみ江さんは持ち前の強さと頑張りで、人生を切り開いていく。
著者がきみ江さんに深く関わって書いたことは伝わってくる。
しかし文章はあまり上手くない。書いてほしいところには手が届かず、書かなくていいことが書いてある。特にこの本は子ども向けなのだから、戦前戦後の様子や、社会がハンセン病をどうとらえていたか、治癒の過程などもう少し詳しく書くべきだし、きみ江さんがどんな宗教を信じてもよいが、ハンセン病になったのは、前世で悪いことをしたからかも、と考えたことは、知識のない子どもには誤解を招くと思う。
大多数の人が栄養状態が悪く、免疫力が低い上、治療法がない時代には、隔離は仕方ないことだったかもしれないが、療養所で甚だしい人権侵害があったこと、治療法が確立し、完治しても、隔離されたままだったこと、差別が改善されなかったことがハンセン病患者の最大の不幸だと思うが、きみ江さんの人生を描くことに重点がおかれるあまり、そのあたりが足りない。
しかし、子ども向けのハンセン病の本は少ないので、存在は評価したい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2015年8月27日
- 読了日 : 2015年8月27日
- 本棚登録日 : 2015年8月27日
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